月次報告書のプロンプト集
月次報告書は、なぜ毎月同じくらいの時間がかかるのか。 原因は「書く内容を考えている」からではなく、「数字を文章にする」 「部門ごとにバラバラな書式をそろえる」という作業に時間を取られているからである。 この部分はAIに任せやすい。任せられないのは、数字が動いた理由の推測と、 来月どう対応するかという経営判断である。 この記事では、月次報告書の作成で使える指示文(プロンプト)を5本、 コピーして使える形で紹介する。
月次報告書、AIにどこまで任せられるのか
月次報告書の作成を工程で分けると、AIに向く部分と向かない部分がはっきりする。
| 工程 | 内容 | 担当 |
|---|---|---|
| 数値からのコメント下書き | 集計結果を文章の形にする | AI |
| 部門別報告の書式統一 | バラバラな書式を1つの様式にそろえる | AI |
| 前月・前年同月比較の整理 | 変化した項目を拾い出す | AI |
| 課題・ToDoの箇条書き整理 | 各部門から届いたメモを整形する | AI |
| 数字が動いた原因の分析 | なぜその数字になったかを考える | 人 |
| 来月の対応方針の決定 | 何をどう改善するかを決める | 人 |
AIが作るのは「材料を文章の形にする」ところまでで、 その文章が事実と合っているか、結論として妥当かは担当者が確認する。
いまの時間とAI化後の目安
一般的な業務量から試算すると、月次報告書1本(部門報告3〜5本を統合する 想定)の作成にかかる時間はおおむね次のとおりである。
| 業務 | いまの時間 | AI化後 | 差 |
|---|---|---|---|
| 数値集計からのコメント下書き作成 | 60分 | 15分 | 45分 |
| 部門別報告の書式統一・整形 | 50分 | 15分 | 35分 |
| 前月・前年同月比較の整理 | 30分 | 10分 | 20分 |
| 課題・ToDoの整理 | 30分 | 10分 | 20分 |
| 合計 | 170分 | 50分 | 120分 |
試算の前提(一般的な業務量からの目安。実際の時間は部門数・報告項目数・ 集計方法で変わる)
- 部門数は3〜5部門、各部門から届く報告メモの分量はA4半分程度と仮定
- AI化後の時間には、下書きを担当者が読んで事実と違う箇所を直す時間を含む
- 集計そのもの(数字の計算)は表計算ソフトで終わっている前提。集計作業自体の時間は含まない
集計数値からハイライトコメントを作るプロンプト
売上・件数などの集計結果があるとき、報告書に添えるコメント文の 下書きに使う。
あなたは月次報告書の作成担当です。
以下の集計結果から、事実として読み取れることだけを
3〜4行の文章にまとめてください。
数字にない解釈(原因の推測や評価)は書かず、
「〇〇が前月比でX%変化した」という事実の記述にとどめてください。
特に変化が大きい項目(前月比±10%以上)があれば、
その項目を最初に挙げてください。
【集計結果】
(項目名・今月の数値・前月の数値をここに貼り付ける)
「【集計結果】」の中身を、実際の集計表の数字に置き換えて使う。 出てきた文章は「事実の記述」であり、なぜその数字になったかの 原因分析ではない。原因は担当者が現場の状況を踏まえて別途書く。
部門別報告を統一フォーマットに整形するプロンプト
各部門からバラバラな形式でメモが届いたとき、報告書用の様式に そろえるために使う。
以下は各部門から届いた月次報告のメモです。
内容を変えずに、次の統一フォーマットに整形してください。
【統一フォーマット】
- 部門名
- 今月の実績(数字がある場合はそのまま記載)
- 主な取り組み(3行以内)
- 課題(あれば箇条書き)
- 来月の予定(あれば箇条書き)
メモに記載がない項目は「記載なし」としてください。
数字を推測で埋めないでください。
【各部門のメモ】
(部門ごとのメモをここに貼り付ける)
「メモに記載がない項目は記載なしとする」「数字を推測で埋めない」の 2行が要になる。これがないと、記載のない項目をAIが文脈から それらしく埋めてしまい、実態と違う報告書になる。
前月・前年同月比較のコメントを作るプロンプト
前月や前年同月との違いを説明する文章が要るときに使う。
以下は月次実績の今月・前月・前年同月の数値です。
変化が大きい項目を3つまで挙げ、
「〇〇が前月のX、前年同月のYに対して、今月はZ」という
事実だけを箇条書きにしてください。
変化の理由は書かないでください。
【今月の実績】
(ここに貼り付ける)
【前月の実績】
(ここに貼り付ける)
【前年同月の実績】
(ここに貼り付ける)
変化の理由を書かせないのは、AIが現場を知らないまま数字だけから 理由を推測すると、実態とずれた説明を報告書に載せてしまうためである。 理由の記述は、各部門からの報告メモを読んだ担当者が別途加える。
課題とToDoを整理するプロンプト
各部門のメモに散らばっている課題や対応事項を、報告書の 「課題」欄用にまとめるときに使う。
以下は各部門から届いた月次報告メモです。
この中から「課題」「未対応の事項」に該当する記述を拾い出し、
次の形式で一覧にしてください。
【出力形式】
部門名|課題の内容(1行)|緊急度(高・中・低のいずれか、
記載があれば従い、記載がなければ「不明」とする)
課題かどうか迷う記述は、除外せず「要確認」の欄に別途残してください。
【各部門のメモ】
(メモをここに貼り付ける)
緊急度が書かれていない場合に「不明」として残す指示がポイントである。 AIに緊急度を推測させると、実際には優先度の低い課題が 「高」に分類されるなど、現場の感覚とずれる場合がある。
経営会議向けの1枚サマリーを作るプロンプト
各部門の報告がそろったあと、経営会議で最初に見せる要約を 作るときに使う。
以下は今月の部門別報告(実績・課題・来月の予定)です。
経営会議で最初に配る1枚サマリーを作成してください。
【条件】
- 全体を200字以内でまとめる冒頭コメントを1つ書く
(数字にない解釈は書かず、事実の記述にとどめる)
- 部門ごとに「実績」「課題」を1行ずつにまとめる
- 全部門に共通する課題があれば、最後に別枠でまとめる
【部門別報告】
(整形済みの部門別報告をここに貼り付ける)
冒頭コメントを「事実の記述にとどめる」としているのは、 このコメントが経営判断の材料として最初に読まれる部分だからである。 AIの推測が混じった文章がそのまま経営判断の起点になることは避ける。
数字の食い違いが起きやすい箇所への注意
部門ごとに「売上」「件数」などの定義が微妙に異なる場合がある。 例えば、ある部門は税込みで数字を出し、別の部門は税抜きで 出しているようなケースである。AIは渡された数字をそのまま 文章化するため、定義の違いに気づかず統合してしまう。 部門別報告を統合する前に、集計の前提(税込みか税抜きか、 どの期間の数字か)が部門間でそろっているかを人が確認する 工程は省略しない。
よくある質問
Q. 月次報告書の全文をAIに一から書かせてもよいですか。
A. 材料(数字・各部門のメモ)が揃っていれば下書きは作れる。 ただし材料が不十分なまま書かせると、数字や事実を それらしく補ってしまう場合がある。材料をそろえてから 使う道具として考えるほうが安全である。
Q. 部門ごとに報告フォーマットが全然違う場合でも整形できますか。
A. メモの中に必要な情報(実績・課題・来月の予定など)が 文章として含まれていれば整形できる。情報自体が メモに書かれていない場合は、AIが埋めるのではなく 「記載なし」として担当部門に確認を戻す運用にする。
Q. 数字が前月から大きく変わった原因もAIに書かせられますか。
A. AIは数字の変化を指摘するところまでで、原因の推測は 書かせない運用が安全である。原因は現場の状況を知る 担当者が把握しており、AIが持っている情報は数字だけである。
Q. 経営会議で使う資料なので、AIの下書きをそのまま出してよいですか。
A. そのまま出さない。下書きの数字が集計結果と一致しているか、 事実と異なる記述が混ざっていないかを、会議前に 必ず人が読んで確認する。
Q. 毎月同じプロンプトを使い回して問題ありませんか。
A. フォーマットや比較の型が変わらないなら使い回せる。 ただし集計項目が増減した月は、プロンプト内の 【出力形式】の項目もあわせて見直す必要がある。
読んだ内容の確認に3問だけ。押すと答えが開きます。
Q1. 月次の集計数値から「〇〇が前月比でX%変化した」という事実だけの文章を作る作業は、AIに任せられる。
○ — 数字を文章に変換する作業はAIが得意で、事実の記述だけなら任せやすい(本文参照)。
Q2. 数字が悪化した原因を推測し、来月の対策を決めることは、AIに任せてよい。
× — 原因の推測や対策の決定には現場の事情を知る人の判断が必要で、AIには任せられない(本文参照)。
Q3. 複数の部門から届いた報告フォーマットの違いを1つの様式にそろえる作業は、AIに任せられる。
× — 様式をそろえる作業自体はAIに向くが、本文では部門ごとに定義が異なる数字の扱いは人の確認が必要と説明している(本文参照)。