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AIで問い合わせメールを分類して振り分ける手順

結論

問い合わせメールの分類・振り分けは、「どの部署宛か」「どんな種類の問い合わせか」を 判定してから担当者に転送する作業です。この判定部分はAIに任せられます。 一般的な業務量から試算すると、1日30件の問い合わせを受ける会社であれば、 振り分け作業だけで1日1時間前後が空く計算です(後述の試算)。 ただし、クレームや契約に関わる内容かどうかの最終判断、 そして間違って振り分けたときの被害の大きさは、人が見ておく必要があります。

問い合わせメールの振り分けに、いま何分かかっているか

問い合わせメールが届いてから担当者に渡るまでには、次の作業が発生します。

作業 内容
開封・内容確認 メールを開き、本文を読んで要件をつかむ
種別の判定 「注文」「クレーム」「見積依頼」などに分類する
担当部署の判定 営業・サポート・経理のどこ宛かを決める
転送 担当者にメールを転送する、または管理ツールに登録する
一次返信 「受け付けました」の自動返信以外の、内容に応じた一言を添える

小規模な会社では、これを総務担当や営業事務が兼務で行っていることが多く、 本来の業務の合間に割り込む形で処理されがちです。件数が多い日は、 この振り分け作業だけで午前中がつぶれるという声もよく聞かれます。 ここでいう「よく聞かれる」は当サイトが取材や統計で確認した数値ではなく、 以下の試算はあくまで一般的な業務量からの目安として読んでください。

AIに任せられるのは「読んで仕分ける」部分

問い合わせメールの処理のうち、AIに任せられるのは次の3つです。

  • 種別の判定:メール本文を読み、「注文」「クレーム」「問い合わせ」「営業連絡」などの あらかじめ決めたカテゴリのどれに近いかを判定する
  • 担当部署の割り当て:カテゴリと本文の内容から、営業・サポート・経理のどこに 転送すべきかを判定する
  • 要約の添付:転送する際に、本文の要点を1〜2行にまとめて添える

これらは「決まったルールに沿って分類する」作業なので、AIが得意とする領域です。 一方で、次の判定は人が行う前提で設計する必要があります。

  • クレームの深刻度(軽微な指摘か、法的措置に発展しうる内容か)
  • 契約金額や取引条件に関わる、経営判断が必要な問い合わせ
  • 個人情報の開示請求など、法律上の対応期限がある問い合わせ

AIは「クレームらしいメール」を検出することはできますが、 「このクレームは今日中に社長に報告すべきか」という重み付けまでは任せられません。 分類までをAIに、深刻度の最終判断は人に、という役割分担が現実的です。

どういう仕組みで振り分けているのか

難しい言葉を使わずに説明すると、次のような流れになります。

  1. メールが届く:問い合わせ用のメールアドレス(info@など)に届く
  2. AIが本文を読む:件名と本文を読み取り、あらかじめ決めたカテゴリのどれに 近いかを判定する。この判定は「過去の分類例を参考に、似ているものを選ぶ」という 仕組みで動いている
  3. 振り分け先が決まる:カテゴリごとに紐づけた転送先(部署のメールアドレスや 管理ツールの担当者欄)に自動で回る
  4. 人が最終確認する:転送されたメールを担当者が開き、内容を確認して対応する

ポイントは、AIが「カテゴリの候補を出す係」であり、 「対応する係」ではないという点です。振り分けを間違えたときに 最終的に気づけるのは、実際にメールを開く担当者です。 振り分けが正しいかどうかを定期的に見直す仕組み(後述)を 最初から組み込んでおくことが、事故を防ぐ鍵になります。

導入するとどれだけ時間が減るのか

一般的な業務量から試算すると、次のような差になります。

業務 いまの時間 AI活用後
開封・内容確認(1件あたり) 1.5分 0.5分 1分
種別・担当部署の判定(1件あたり) 1分 自動 1分
転送作業(1件あたり) 0.5分 自動 0.5分
1件あたり合計 3分 0.5分 2.5分

試算の前提:1日30件の問い合わせを受ける会社で、担当者1名が 振り分け作業を行っている想定です。1件あたりの差は2.5分で、 1日30件であれば合計75分(1時間15分)の差が出る計算です。 この時給を仮に2,500円とすると、1日あたり約3,100円、 月20営業日でおよそ62,000円分の作業時間に相当します (時給は一例であり、実際の人件費水準は会社ごとに異なります)。

問い合わせ件数が少ない会社(1日10件以下)では、 振り分け作業自体の負担がもともと小さいため、 この試算ほどの差は出にくい点に注意してください。

AIに任せてはいけない問い合わせの見分け方

次のような内容を含むメールは、AIによる一次分類のあとも、 人が内容を読んでから対応する運用にしておく必要があります。

  • 損害賠償や返金を求める文言が含まれるクレーム
  • 「弁護士」「消費生活センター」などの語を含む問い合わせ
  • 個人情報の開示・訂正・削除を求める内容
  • 契約条件の変更や解約に関する申し出
  • 差出人が特定の役職者・取引先の重要人物である場合

これらは振り分け先を間違えること自体よりも、 「対応が遅れること」「軽く扱われたと受け取られること」の被害が大きい領域です。 AIによる分類ルールの中に「上記のキーワードを含む場合は、 カテゴリに関係なく責任者にも同時に転送する」という例外ルールを 組み込んでおくと、見落としを減らせます。

誤分類・個人情報の扱いで注意すること

問い合わせメールには、氏名・連絡先・取引内容など個人情報や 取引情報が含まれます。AIによる振り分けを導入する際は、次の点を確認してください。

  • 使用するAIサービスが、入力した内容を学習に使わない設定になっているか (多くの法人向けサービスでは学習オフの設定があるが、サービスごとに異なる)
  • メールの内容を外部のAIサービスに送信すること自体が、 取引先との契約や社内規程に抵触しないか
  • 誤って別部署・別会社宛の情報を転送した場合の訂正・報告フローが決まっているか

個人情報保護委員会は2023年6月2日、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しています。 個人情報を含むプロンプトを生成AIサービスに入力する場合は、あらかじめ特定した利用目的の 範囲内であることを確認する必要があり、本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを 入力し、それが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合、個人情報保護法に違反する 可能性があるとされています (出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」2023年6月2日 https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/)。

料金・機能はサービスによって変わるため、 導入前に現時点の情報を確認してください。

始め方の順番

いきなり全部の問い合わせメールをAIに通すのではなく、 次の順番で試すと失敗しにくくなります。

  1. 過去の問い合わせメールを見直し、カテゴリを決める(「注文」「クレーム」 「見積依頼」など、実際に来ているメールの種類に合わせて5〜8個程度に絞る)
  2. 例外ルールを先に決める(クレーム関連の語を含む場合は責任者にも転送する、など)
  3. 1〜2週間、AIの判定結果と人の判断を並行して比較する(AIが出した分類を すぐには使わず、担当者の判断と突き合わせて精度を確認する)
  4. 精度を見ながら本番運用に切り替える(判定に迷うメールが多いカテゴリは、 カテゴリの分け方自体を見直す)
  5. 月1回、誤分類の件数を振り返る(件数が増えていないか、新しい種類の 問い合わせが増えていないかを確認する)

最初の2週間を「AIに判断させて、答え合わせをする期間」に充てることで、 本番運用に入ってからの誤振り分けを減らせます。

よくある質問

Q. どんなツールを使えばよいですか。 メール管理ツールに分類機能が付いているものと、生成AIサービスに 自社でルールを作り込むものの2種類があります。 問い合わせメールの共有・自動振り分けに対応した主なツールとして、Re:lation(リレーション)・ yaritori・メールディーラーなどがあります。AI機能はRe:lationでは「Business」プラン以上 (登録ユーザー数5名〜)で使えるなど、プランによって使える範囲が変わります。 ただし2026年8月に各社の公式サイトを確認した範囲では、いずれのツールも具体的な 月額料金は公表しておらず、利用人数やメールの保存件数に応じた個別見積もりとなって います。導入を検討する際は、自社の問い合わせ件数を伝えたうえで見積もりを取ることを おすすめします。

Q. カテゴリはいくつに分ければよいですか。 細かく分けすぎると判定の精度が落ちやすくなります。 まずは実際に来ているメールを1〜2週間分見直し、 多い順に5〜8個程度のカテゴリに絞ることをおすすめします。

Q. 誤分類が起きたら、どう気づけばよいですか。 振り分け先の部署で「明らかにうちの部署宛ではない」メールを受け取ったら 報告する運用ルールを決めておくと、誤分類の件数を把握しやすくなります。 月1回の振り返りで件数を確認する仕組みを組み合わせるとよいでしょう。

Q. クレームメールも自動で振り分けてよいですか。 分類そのものはAIに任せられますが、対応の要否や深刻度の判断は 人が行う必要があります。クレーム関連の語を含む場合は、 通常の振り分け先に加えて責任者にも同時に転送する例外ルールを 組み込んでおくことをおすすめします。

Q. 導入にどれくらいの期間がかかりますか。 カテゴリ決めと例外ルールの設計に数日、精度確認の並行運用に 1〜2週間を見ておくと、本番運用への切り替えがスムーズです。 問い合わせの種類が多い会社ほど、カテゴリ設計に時間がかかる傾向があります。

理解度チェック

読んだ内容の確認に3問だけ。押すと答えが開きます。

Q1. 1日30件の問い合わせを受ける場合、AIによる振り分けで1日1時間15分程度の時間削減が見込める試算が示されている

— 1件2.5分の削減で、1日30件なら75分削減できるという試算

Q2. 問い合わせメールの全てのステップがAIに自動で処理され、人による確認は不要である

× — クレーム深刻度や契約関連は人が判断する必要があり、AIは分類までの担当

Q3. 導入初期は1〜2週間、AIの判定結果と人の判断を並行して比較して精度を確認する

— 本番運用に入る前の精度確認期間が1〜2週間を目安としている