AIで会議の議事録を作る手順|録音から共有まで

会議の議事録をAIで作る手順は「録音」「文字起こし」「下書き作成」「人による確認」「共有」の5段階です。 AIに任せられるのは文字起こしと下書き作成の2段階で、発言の解釈や決定事項の最終確認は人が担います。 一般的な業務量から試算すると、1回1時間の会議の議事録作成は、この手順を踏むことで 作成時間がおよそ8分の1になる計算です(後述の試算)。手順を1つでも飛ばすと、 誤字だらけの下書きがそのまま共有される事故につながります。
議事録作成の5段階、それぞれ誰が担うのか
議事録ができあがるまでの作業を段階ごとに分けると、AIに任せられる範囲がはっきりします。
| 段階 | 内容 | 担当 |
|---|---|---|
| 1. 録音 | 会議の音声を記録する | 人(ツールの操作のみ) |
| 2. 文字起こし | 音声を文字に変換する | AI |
| 3. 下書き作成 | 文字起こしを整形し、決定事項・宿題を抽出する | AI |
| 4. 確認 | 発言の解釈や決定事項の誤りをチェックする | 人 |
| 5. 共有 | 議事録を関係者に配布する | 人(配布先の判断) |
AIが得意なのは「音声を文字にする」「文字を議事録の型に整える」という変換作業です。 「誰の発言をどう解釈するか」「何が本当に決まったのか」の判断は、 その場にいた人でないと正しく埋められません。この記事では、この5段階を順番に見ていきます。
録音は何で撮ればよいか
議事録作成の出発点は録音です。ここでAIに任せられる部分はなく、 録音の質がそのあとの文字起こしの精度をそのまま左右します。
- オンライン会議(Web会議ツール)は録画・録音機能を備えていますが、無料プランでは使えないことが多い点に注意が必要です。 Google MeetとMicrosoft Teamsは無料版で録画機能が使えず、有料プランへの加入が必要です (Google Meet ヘルプ、 Microsoft Teams 無料版のヘルプ)。 Zoomは無料プランでもパソコンへのローカル保存であれば録画できます (Zoom サポート:コンピュータおよびクラウドレコーディングの始め方。 クラウド保存は有料プランのみです)。 以上は2026年8月時点の情報で、各社の料金体系・プラン名は変更される場合があります
- 対面会議は、ICレコーダーやスマートフォンの録音機能を使います
- 参加人数が多い対面会議では、発言者ごとの声を拾いやすいマイク配置が文字起こしの精度に影響します
録音を始める前に、参加者へ録音する旨を伝えておくことが望ましいとされています。 会議参加者本人が自分も参加している会話を無断で録音すること自体は、原則として 違法ではないとする整理が複数の弁護士の解説で共通しています。根拠として挙げられているのは、 詐欺の被害を疑った当事者が相手との会話を無断で録音した事案で、証拠能力を否定しなかった 最高裁決定(2000年〈平成12年〉7月12日)です。決定文そのものは確認できていませんが、 年月日と結論の向き(無断録音そのものは違法とされず、証拠能力も否定されなかった)は、 複数の弁護士の解説記事で一致しています(一次情報なし)。 ただし、録音したデータを本人の同意なく第三者に開示した場合は、 別途プライバシー侵害が問題になり得るという指摘があります (鈴木・大和田法律事務所:"こっそり録音"は違法か?)。 また、会社が録音を禁止する社内規則を定めているにもかかわらず録音した場合は、 懲戒処分の対象になり得るという指摘もあります (弁護士法人ロア・ユナイテッド法律事務所:事業場内での無断録音の禁止)。 厚生労働省など公的機関が「社内会議の録音に同意が必要か」を 直接定めた統一見解は見当たりませんでした(一次情報なし)。 社外が参加する会議では、録音していることを伝えないまま記録を残すと、 あとで「言った・言わない」以外のトラブルに発展する場合があります。
文字起こしから下書き作成まで、何時間減るのか
録音した音声をAIに文字起こしさせ、そのまま議事録の型に整形させるところまでが、 この記事でいう「AIに任せられる範囲」の中心です。
| 業務 | いまの時間 | AI活用後 | 差 |
|---|---|---|---|
| 文字起こし(1時間の会議) | 90分 | 5分 | 85分 |
| 議事録の下書き作成(整形・要約) | 45分 | 10分 | 35分 |
| 決定事項・宿題の抽出 | 20分 | 5分 | 15分 |
試算の前提:1時間の会議、参加者4〜6名、録音の音質が良好(発言が聞き取れる状態)という想定です。 「いまの時間」は、人が録音を聞き直しながら手作業で書き起こし、 議事録の型に整えている場合の目安です。すでに文字起こしツールだけ導入済みの会社は、 この差はもっと小さくなります。
音質が悪い、複数人が同時に話す場面が多い、専門用語や社内独自の略語が多い会議では、 文字起こしの精度が下がり、下書き作成にかかる時間の差も縮まります。
決定事項の抽出は、なぜ人の確認が要るのか
AIに文字起こしを渡すと、「決定事項」「宿題(次にやること)」「担当者」を それなりの精度で抜き出してくれます。ただし、次の3つは誤りが起きやすい部分です。
- 反語や仮定の発言を決定事項と誤認する:「これで進めるという判断でいいんですか」という 疑問文を、そのまま「進めることが決まった」と抽出してしまう場合があります
- 議論の途中経過を結論と誤認する:最終的に覆った意見が、途中の発言のまま抽出される場合があります
- 担当者名の聞き間違い:似た名前の参加者がいる会議では、発言者と担当者を取り違える場合があります
この3つは、その場の空気や会議の流れを知っている人でないと正しく判定できません。 AIが作った下書きを「たたき台」として扱い、決定事項と宿題の欄だけは 人が目で確認してから共有する運用が現実的です。
共有まで含めた運用フローの作り方
議事録は作って終わりではなく、関係者に届いて初めて意味があります。 共有の段階でAIに任せられる範囲は限定的です。
| 作業 | AIに任せられるか |
|---|---|
| 議事録本文の作成 | 任せられる(下書きまで) |
| 配布先の選定 | 任せられない(会議ごとに判断が要る) |
| 配布のタイミング判断 | 任せられない |
| 定型フォーマットへの流し込み | 任せられる |
配布先を毎回AIに判断させると、機密度の高い会議で 本来共有すべきでない相手に議事録が届くリスクがあります。 配布先のリストは会議の種類ごとに固定しておき、 AIには「決まったフォーマットに流し込む」作業だけを任せる設計が安全です。
議事録作成でよく起きる失敗
- 文字起こしをそのまま共有してしまう:話し言葉のままの文章は読みにくく、 誤字や言い間違いもそのまま残るため、下書き作成の段階を経る必要があります
- 確認の段階を省略する:AIが作った下書きの決定事項欄を確認せずに配布し、 実際とは違う内容が「決定事項」として残ってしまう場合があります
- 録音を始め忘れる:AIに任せられるのは録音した後の工程だけなので、 録音自体を忘れると議事録は作れません
これらはいずれも、5段階のどこか1つを飛ばしたときに起きています。 手順を守ること自体が、AI活用の効果を決める要因になります。
議事録AIを始める順番
導入をいきなり全社の会議に広げるのではなく、次の順番で試すと失敗しにくくなります。
- 社内の定例会議1本で試す(機密度が低く、失敗しても影響が小さい会議を選ぶ)
- 文字起こしの精度を確認する(音質・参加人数による精度の違いを把握する)
- 決定事項・宿題の抽出精度を確認する(誤抽出のパターンを洗い出す)
- 確認・共有のフローを固定する(誰が確認し、誰が配布するかを決める)
- 対象会議を広げる(精度と運用が安定してから、他の会議にも適用する)
いきなり複数の会議で並行導入すると、それぞれの会議で起きる誤抽出のパターンが 混在し、どこに原因があるか切り分けにくくなります。1本ずつ試すほうが、 運用ルールを固める近道です。
なお、議事録の下書きをAIに作らせる具体的な指示文(プロンプト)の型は、 別記事でまとめています。この記事は手順とツール選定の考え方に絞っています。
よくある質問
Q. どんなツールを使えばよいですか。 オンライン会議は会議ツール自体の録音・文字起こし機能、対面会議は録音アプリと 文字起こしサービスの組み合わせが一般的です。 製品ごとの料金・機能は変化が早いため、検討時に各社の公式ページで最新情報を確認してください。
Q. 文字起こしの精度はどのくらいですか。 音質と話者数、専門用語の量によって変わります。 一般的には、静かな環境で1人ずつ発言する会議のほうが精度は高くなります。 具体的な精度の数値は使うツールによって異なるため、導入前に自社の会議で試すことをおすすめします。
Q. 録音を参加者に伝える必要はありますか。 社内会議であっても、録音していることを伝えておく方が望ましい運用です。 会議参加者本人が自分も参加している会話を無断で録音すること自体は、原則として 違法ではないとする整理が複数の弁護士解説で共通していますが、録音データを 本人の同意なく第三者に開示した場合は別途プライバシー侵害が問題になり得るという 指摘があります。社外が参加する会議では、録音・AI活用の可否について 事前確認が必要になる場合があります(社内会議の録音同意に関する公的機関の 統一見解は見当たりませんでした。一次情報なし)。
Q. 決定事項の抽出を全部AIに任せてよいですか。 下書きまでは任せられますが、最終確認は人が行う必要があります。 反語や議論の途中経過を決定事項と誤認するケースが起きるためです。
Q. 何人規模の会社から効果が出ますか。 会議の頻度が多い会社ほど時間の差は大きくなります。 上表の試算(1時間の会議1回あたり135分の差)をもとに計算すると、 週2〜3回会議がある会社であれば、議事録作成だけで月19〜29時間程度の差が出る 計算(1ヶ月4.33週換算)ですが、実際の効果は会議の長さや参加人数によって変わります。


