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佐賀・長崎・熊本の中小企業がAIで先に減らせる仕事

結論

佐賀・長崎・熊本の中小企業が先にAIに任せられるのは、経理の転記、見積書の下書き、問い合わせへの一次回答など、 どの業種でも共通する「型が決まった事務作業」です。 一般的な業務量から試算すると、社員10名規模の会社でも月21時間ほどの削減余地があります(試算根拠は後述の表)。 3県とも東京・福岡から距離があり、IT人材の採用や外部への相談先が限られる分、 まず自社の事務作業をAIで減らすところから着手する価値があります。 業種特有の判断(与信、品質検査、接客対応など)は任せられません。

佐賀・長崎・熊本で、なぜ「先に」AIに任せる価値があるのか

3県に共通する事情が2つあります。

1つ目は、IT人材の確保が難しいことです。中小企業庁「2024年版中小企業白書」は、具体的なDXの 取組に着手している企業ほど、取組を進める際の課題として「費用の負担が大きい」や「DXを推進する 人材が足りない」を多く挙げていると指摘しています (出典: 中小企業庁「2024年版中小企業白書」第7節 DX(デジタル・トランスフォーメーション) https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/chusho/b1_4_7.html )。 ただしこれは全国の中小企業を対象にした集計で、同白書に「地方は都市部よりIT人材を集めにくい」 と地域を比較した記述は見当たりませんでした。佐賀・長崎・熊本の3県それぞれが福岡県より IT人材の確保が難しいかどうかを直接比較した公的統計も見つかりませんでした。 人を増やさずに事務作業の量を減らす手段として、 AIを使う意味が相対的に大きくなります。

2つ目は、AI導入を相談できる地元の会社が少ないことです。東京の会社に相談すると、 移動費や出張費が乗った見積もりになりがちです。オンラインで完結する範囲の業務から 自社で試すほうが、初期費用を抑えられます。

一方で、3県とも製造業・水産加工・観光業など「現場の手作業」を持つ会社が多く、 現場そのものをAIに置き換えることは当面できません。減らせるのは、その現場を支える 事務作業の部分です。

業種を問わず共通して減らせる事務作業

まず、佐賀・長崎・熊本のどの業種の会社にも当てはまる事務作業を整理します。 社員10名規模の会社を想定し、一般的な業務量から試算した目安です。

業務 いまの時間(月・1人あたり) AI化後の時間
経理の転記・請求書突き合わせ 10時間 3.5時間 6.5時間
見積書・提案書の下書き 8時間 3.5時間 4.5時間
問い合わせへの一次回答 6時間 2.5時間 3.5時間
議事録・報告書の作成 6時間 2時間 4時間
求人票・応募書類の一次確認 4時間 1.5時間 2.5時間
合計 34時間 13時間 21時間

試算の前提: 会計ソフト・チャットツールなど、既にデジタルで記録が残っている業務を前提にしています。 紙の帳簿や手書きの伝票が中心の会社では、AIに読ませる前にデータを電子化する手間が発生し、 この試算より削減幅が小さくなります。人数配分・業務量は会社ごとに異なるため、 自社の担当人数に置き換えて計算し直してください。

佐賀県:食品加工・陶磁器業が中心の地域での入口

佐賀県は農業・食品加工業と、有田焼・伊万里焼に代表される陶磁器業の会社が多い地域です。 佐賀県の集計でも、製造品出荷額等の構成比は食料品18.9%、電子部品・デバイス12.3%、 輸送機器11.0%の順で、食品加工業が主要産業の一角を占めていることが確認できます (出典: 佐賀県政策部統計分析課「2024年経済構造実態調査(製造業事業所調査)佐賀県の概要」 表-9・令和5年の数値 https://www.pref.saga.lg.jp/toukei/kiji003116399/3_116399_376665_up_ncperm08.pdf 。 なお経済産業省「工業統計調査」は令和2年で廃止され、 現在は「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」に統合されています)。 有田焼・伊万里焼は佐賀県が公式に紹介する伝統的地場産業です (出典: 佐賀県公式サイト「伊万里・有田焼」 https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00325421/index.html )。 印刷業については、同じ調査で県内の印刷・同関連業の事業所数は59事業所(製造業全体の4.1%)で、 食料品279事業所・窯業土石211事業所と比べると数の多い業種ではありません (出典: 同上・表-3、令和6年6月1日現在)。

食品加工業では、受発注の入力、賞味期限や規格に関わる書類の作成が定型化しやすい業務です。 製造そのものの品質判断はAIに任せられませんが、出荷伝票や取引先ごとの規格書の下書きは AIに任せられる範囲に入ります。

陶磁器業のように小規模な工房・窯元が多い業種では、専任の事務担当がいないことが多く、 経営者自身が受注管理と経理を兼ねているケースが目立ちます。この場合、まず受注の記録と 請求書作成をAIで下書きし、確認だけ人が行う運用に変えることが、最も負担を減らしやすい入口です。

印刷業では、見積もりのパターンが取引先ごとに決まっていることが多く、過去の見積書を AIに学習させて下書きを作らせる余地があります。

長崎県:造船・水産加工・観光業が多い地域での入口

長崎県は造船関連の製造業、水産加工業、観光・宿泊業の会社が多い地域です。離島を抱える地域では、 物流や仕入れの調整に時間がかかる点も特徴です。 長崎県の集計では、製造品出荷額等の構成比は1位が輸送用機械器具(造船を含む)22.4%、 2位が電子部品・デバイス・電子回路20.4%、3位が食料品18.5%です (出典: 長崎県「長崎県の工業(2023年経済構造実態調査)」 https://www.pref.nagasaki.jp/uploads/2024/12/1734398479.pdf )。 水産加工業については、県内の事業者数が全国上位という記述の裏付けを探しましたが、 農林水産省「水産加工業経営実態調査」は全国・大海区単位の集計で、都道府県別の事業体数は 公表されていませんでした。 観光・宿泊業は、長崎県公式の観光統計で2023年の延べ宿泊客数が732万人(前年比15.9%増)と 公表されています (出典: 長崎県「長崎県観光統計」令和5年(2023年)版 https://www.pref.nagasaki.jp/uploads/2024/09/1725421464.pdf )。

造船関連の製造業では、協力会社とのやり取りに使う書類(発注書、工程表)が多く、 定型的な書類作成をAIに任せることで、現場の管理者が現場作業に使える時間を増やせます。

水産加工業では、取引先ごとの規格・ロット管理の記録作業が発生します。この記録自体は AIに任せられますが、品質そのものの検査・判断は人が行う業務として残ります。

観光・宿泊業では、多言語での問い合わせ対応、予約確認メールの一次返信が任せやすい業務です。 離島や観光地の宿泊施設では、少人数で運営していることが多く、一次対応をAIに任せることで 接客そのものに使える時間を確保しやすくなります。

熊本県:半導体関連製造・自動車部品・農業が多い地域での入口

熊本県は近年、半導体関連の製造業の集積が進んでいる地域です。関連する自動車部品製造業、 農業・畜産業の会社も多く存在します。 台湾TSMCの熊本進出を受けて、熊本県は「半導体関連産業集積強化推進本部」を設置し、 半導体関連産業の集積強化に取り組んでいます (出典: 熊本県「半導体関連産業集積強化推進本部(特設ページ)」 https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/1/215640.html )。自動車部品製造業についても、 九州7県でつくる九州自動車・二輪車産業振興会議が作成した「九州の自動車関連企業立地マップ」を 熊本県が公開しており、県内の集積が確認できます (出典: 熊本県「九州の自動車関連企業立地マップ等を公開します!」 https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/65/2685.html )。農業・畜産業は、農林水産省「生産農業所得統計」に基づく資料で、 熊本県の農業産出額が全国5位(令和5年、3,757億円)となっており、このうち畜産が 構成比36.5%を占め、上位5品目には肉用牛(435億円)・生乳(317億円)が入っています (出典: 九州農政局「県別の農業産出額」 https://www.maff.go.jp/kyusyu/kikaku/attach/pdf/mirusiru_2025-43.pdf )。 畜産・肉用牛・乳用牛それぞれの産出額の全国順位は、この資料には記載がなく、 本記事では順位には触れません。

半導体関連や自動車部品の製造業では、取引先への納品書・検査記録の作成、社内向けの 生産日報の集計が定型作業になりやすい部分です。品質検査そのものの合否判断はAIに 任せられませんが、記録の整形・集計はAIに任せられます。

農業・畜産業では、出荷記録や取引先とのやり取りをスマートフォンで済ませている生産者も 増えています。この記録をもとにした請求書作成、補助金申請に必要な書類の下書き作成は、 AIに任せやすい業務です。補助金の要件・提出書類は制度ごとに異なるため、 使える制度の最新情報を 自治体の窓口で確認してください。

何から始めるべきか

3県に共通しておすすめできる順番は次のとおりです。

  1. 経理か見積書作成など、毎月決まって発生する定型業務を1つ選ぶ
  2. その業務にいま何時間かかっているかを、1〜2週間実際に記録する
  3. 記録した時間をもとに、AIに任せる範囲と人が確認する範囲を決める
  4. 小さく試して、削減できた時間を確認してから次の業務に広げる

最初から全業務を一気にAI化しようとすると、確認の負担がかえって増えます。 1業務ずつ、記録と検証を挟みながら進めることをすすめます。

佐賀・長崎・熊本の中小企業のAI活用でよくある質問

Q. 佐賀・長崎・熊本は福岡に比べてAI導入が遅れていますか。 遅れているというより、相談できる地元の会社が少ないという違いがあります。 オンラインで完結する業務から自社で試せば、地域差は導入の障害になりません。

Q. 農業や水産加工のような現場作業もAIに任せられますか。 現場の作業そのもの(収穫、加工、品質検査)は当面任せられません。 任せられるのは、その現場を支える記録・書類作成の部分です。

Q. 東京の会社に相談するのと、地元で完結させるのはどちらがよいですか。 相談内容によります。専門的な導入設計が必要な場合は外部の知見が有効ですが、 まず1つの業務でAIを試すだけであれば、移動費のかからないオンラインの相談や 無料ツールから始めるほうが初期費用を抑えられます。

Q. 社員が数名しかいない会社でもAI化する意味はありますか。 あります。むしろ専任の事務担当を置けない小規模な会社ほど、経営者自身の作業時間が 減る効果を実感しやすい傾向があります。

Q. どの業務から手をつければ失敗しにくいですか。 毎月同じ手順で発生する業務(経理の転記、定型の見積書作成など)が失敗しにくい入口です。 判断の要素が少なく、AIの出力を確認しやすいためです。