AI導入計画書の書き方|補助金申請にも使える構成

AI導入計画書は「現状」「課題」「導入内容」「効果試算」「実行体制」の5つを埋めれば形になります。 社内の稟議用に作った計画書は、費用内訳とスケジュールを追加するだけで補助金申請にもほぼそのまま使えます。 逆に、この5つのどれかが抜けていると、社内の決裁でも補助金の審査でも「効果が読めない」として差し戻されます。 この記事では、5部構成それぞれに何を書くか、時間削減の試算をどう計算するか、補助金申請用に足す項目は何かを順番に示します。
AI導入計画書には何を書けばいいのか
AI導入計画書とは、「どの業務に」「どのAIを」「どれくらいの費用で」入れて、「何がどれだけ改善するか」を1枚〜数枚にまとめた文書です。
決裁者(社長・役員)が読むときに知りたいのは次の4つだけです。
- いくらかかるのか
- いつ元が取れるのか
- 誰がやるのか
- うまくいかなかったときのリスクは何か
逆に言えば、AIの仕組みの説明や技術用語の解説は要りません。決裁者はAIの仕組みを知りたいのではなく、投資判断をしたいだけです。
計画書の基本構成(5部構成)
社内稟議・補助金申請のどちらにも使える基本構成は次の5つです。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 1. 現状 | 対象業務に今かかっている時間・人数・コスト |
| 2. 課題 | その業務のどこにムダ・ミスが起きているか |
| 3. 導入内容 | 使うツール・対象範囲・導入しない範囲 |
| 4. 効果試算 | 削減時間・削減コスト・投資回収期間 |
| 5. 実行体制 | 担当者・スケジュール・失敗時の撤退基準 |
補助金申請の場合は、これに「6. 費用内訳」「7. 補助対象経費の区分」を追加します。詳しくは後述します。
1. 現状(いま何にどれだけ時間がかかっているか)
対象業務の作業時間を、できれば1週間〜1ヶ月分、実際に計測して書きます。感覚で「たぶん月20時間くらい」と書くと、後の効果試算の説得力が落ちます。
書き方の例です。
- 対象業務: 請求書の内容確認・仕訳入力
- 担当者数: 2名
- 現在の所要時間: 1件あたり平均12分、月間180件で月36時間
2. 課題(時間以外に何が問題か)
時間だけでなく、「繁忙期に残業が増える」「担当者しか手順を知らず休めない」「入力ミスで月2〜3件の修正が発生する」など、数字にしづらい問題も書きます。補助金の審査ではここが「導入の必然性」として見られます。
3. 導入内容(やること・やらないことを両方書く)
どの業務にどのツールを入れるかを具体的に書きます。同時に、「導入しない範囲」も書くことが重要です。たとえば「入力内容の最終確認は引き続き人が行う」のように、AIに任せない部分を明記すれば、審査でもリスク管理の姿勢を示せます。
4. 効果試算(削減時間とコストを表にする)
ここが計画書の核です。次の見出しで詳しく説明します。
5. 実行体制(誰が・いつまでに・うまくいかなかったらどうするか)
担当者名(役職でも可)、導入スケジュール、そして「3ヶ月試して効果が出なければ中止する」といった撤退基準を書きます。撤退基準を書いておけば、社内でも補助金の審査でも「計画の実現可能性を検討済み」という印象を与えられます。
効果試算はどう計算すればいいのか
効果試算で見せるのは「時間」と「コスト」の2つです。時間の試算は、業務量から自由に計算してよい部分です(これは外部の統計ではなく、自社の業務量から出す数字のためです)。
次のような表を作ります。
| 業務 | いまの時間(月) | AI化後(月) | 差 |
|---|---|---|---|
| 請求書の仕訳入力 | 36時間 | 10時間 | 26時間 |
| 議事録の文字起こし・要約 | 12時間 | 3時間 | 9時間 |
| 定型メールの下書き作成 | 8時間 | 2時間 | 6時間 |
| 合計 | 56時間 | 15時間 | 41時間 |
試算の前提
- 対象: 経理担当2名・総務担当1名
- 削減率: 転記・要約・下書きなど「決まった手順の作業」は70〜80%削減、判断が必要な確認作業は削減率を見込まない
- 時給換算: 自社の実際の人件費(時給換算額)を入れます。全国一律の平均時給は使いません
- 上記は一般的な中小企業の業務量から試算した目安であり、実際の削減時間は業務フローの標準化度合いによって変わります
時給換算額を掛ければ、月間・年間のコスト削減額が出ます。投資回収期間(何ヶ月で導入費用を回収できるか)も、この表があれば「導入費用 ÷ 月間削減コスト」で自動的に出せます。
補助金申請では何を追加すればいいのか
社内稟議用の計画書に、次の2つを追加すると補助金申請の様式に近づきます。
費用内訳を「補助対象経費」の区分で書く
補助金は経費の全額ではなく、区分ごとに対象・上限が決まっています。デジタル化・AI導入補助金2026(通常枠)では、補助対象経費は「IT導入支援事業者が提供し、あらかじめ事務局に登録されたITツールの導入費用」に限られ、大分類I「ソフトウェア」、大分類II「オプション」、大分類III「役務」の3分類のいずれかに該当するものだけが対象です。自社の常勤従業員の人件費は、この3分類のどこにも入らないため補助対象外です(出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026(通常枠)公募要領」2-2 補助対象経費の内容と、補助対象となるITツールの分類・要件)。ほかの申請枠でも経費区分は枠ごとに定められているため、この部分は思い込みで書かず、対象の枠の公募要領で確認します。
なお、旧称「IT導入補助金」は2026年度から「デジタル化・AI導入補助金」(正式名称:中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金)に名称が変わりました。2026年度の申請枠は「通常枠」「インボイス枠(インボイス対応類型)」「インボイス枠(電子取引類型)」「セキュリティ対策推進枠」「複数者連携デジタル化・AI導入枠」の5つです(出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局公式サイト https://it-shien.smrj.go.jp/about/)。通常枠の補助率・補助額は、申請額5万円〜150万円未満(1プロセス以上のITツールが対象)が補助率1/2以内(一定期間、最低賃金付近で雇用する従業員が全従業員の30%以上いる月が3ヶ月以上ある場合は2/3以内)、申請額150万円〜450万円以下は4プロセス以上のITツールが必須という条件が付き、補助率の区分自体は同じです(出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026(通常枠)公募要領」2-3 補助対象経費、補助率及び補助額)。ほかの申請枠は補助率・上限額の条件が異なるため、申請時点の最新公募要領で確認します。
区分を誤ると審査で経費が対象外と判定されるため、この部分は必ず最新の公募要領で確認してから書きます。
スケジュールを申請の締切から逆算する
デジタル化・AI導入補助金では、「交付決定」を受ける前に一部でも契約・発注・支払いを行った申請は、補助金の交付を受けられません(出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「交付申請マニュアル」令和8年3月26日策定)。計画書のスケジュールは、申請→交付決定→契約→導入→実績報告の順番で、日付を入れて書きます。
計画書が差し戻される典型的な理由
社内稟議・補助金申請の両方で、次のパターンは差し戻されやすいものです。
- 効果試算に前提(時給・削減率・対象人数)が書かれておらず、数字の根拠が追えない
- 「業務が効率化する」など定性的な表現だけで、時間・コストの数字が無い
- 導入しない範囲・撤退基準が無く、リスクへの言及がゼロ
- 費用内訳が「AIツール一式」のように一括表記で、区分ごとの金額が無い
これらはすべて、5部構成のどこかが薄いために起きます。逆に言えば、5部構成を埋めれば大半は防げます。
よくある質問
Q. AI導入計画書はどれくらいの分量で書けばいいですか。
社内稟議であれば1〜3ページ程度で十分です。5部構成の各項目を1〜2段落と表1つでまとめれば、決裁者が読み切れる分量になります。補助金申請は様式が決まっているため、その様式の指示に従います。
Q. 効果試算の数字は実測しないとダメですか。
実測が理想ですが、時間が無い場合は担当者への聞き取りで概算しても構いません。ただし「感覚で月20時間くらい」ではなく、「1件あたり何分×月間何件」のように分解して書くと、後から検証しやすくなります。
Q. 補助金の対象になるAIツールかどうかはどう調べればいいですか。
補助金ごとに対象ツール・対象経費の要件が異なります。申請前に必ず公募要領(中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局など運営元が公開する最新版)を確認してください。ツール提供会社が補助金対応をうたっていても、区分や上限額は年度で変わるため自社での確認が必要です。
Q. 計画書を作ったあと、誰にレビューしてもらうべきですか。
社内稟議なら決裁者に加えて、実際にその業務を担当する人に「この時間感覚は合っているか」を確認してもらいます。補助金申請の場合は、商工会議所や認定支援機関など申請支援に慣れた窓口に一度目を通してもらうと、経費区分のミスを事前に防げます。
Q. 5部構成のうち、最も差し戻されやすいのはどこですか。
効果試算です。前提(時給・削減率・対象人数)が書かれていないケースが最も多く見られます。表の下に前提を明記するだけで、この差し戻しの大半は防げます。
まとめ
AI導入計画書は「現状」「課題」「導入内容」「効果試算」「実行体制」の5部構成で書きます。効果試算は業務量から自分で計算してよい数字ですが、時給などの前提は自社の実際の数字を使い、外部の制度・金額に関わる部分は最新の公開情報で必ず確認してから記載します。
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