ホーム記事事務員が辞めたあとの仕事をAIで回す
総務

事務員が辞めたあとの仕事をAIで回す

結論

事務員が辞めると、まず止まるのは「入力」「発行」「一次対応」の3種類です。 請求書の発行、伝票の入力、電話やメールの一次仕分け。この3つを後任が決まるまでの間、 AIに任せることで社員1人あたり月20〜25時間分の作業を吸収できる計算になります(後述の試算)。 一方で、取引先への値引き回答や与信の判断のように、金額と信用が絡む業務は任せられません。 欠員期間をどう乗り切るかは、任せる業務と任せない業務を先に線引きできるかで決まります。

事務員が辞めたあと、まず何が止まるか

退職の連絡を受けてから最初にやることは、後任探しではなく「その人が何をしていたか」の棚卸しです。 事務職は担当範囲が広く、本人しか把握していない作業が積み重なっていることが多いためです。

止まりやすい業務は、おおむね次の4つに分かれます。

  • 請求書・見積書の発行と入金確認
  • 伝票・帳簿への転記、データ入力
  • 電話・メールの一次受付と振り分け
  • 資料作成、議事録の清書、スケジュール調整

このうち「判断を伴わない転記・照合・定型作成」は、AIに任せる余地が大きい部分です。 逆に「相手の事情を汲んで条件を決める」「与信や金額の可否を判断する」業務は、 後任が決まるまでの間も人が担う必要があります。

AIに任せられる事務業務・任せられない事務業務

線引きの基準は「手順が決まっているかどうか」です。手順が決まっている業務は、 その手順をそのまま指示文にすればAIが再現できます。判断が要る業務は、 判断基準そのものが人の頭の中にしかないため、AIに渡しても答えが安定しません。

任せやすい 任せにくい
請求書・見積書のひな形への転記 値引き・支払い条件の交渉
伝票データの入力、表への集計 与信判断、取引継続の可否
よくある問い合わせへの一次回答文の作成 クレーム対応の最終判断
議事録の文字起こしと整形 人事・評価に関わる記録
空き時間を突き合わせた日程調整案の作成 経営会議の日程確定そのもの

任せにくい業務も、下書きまではAIに作らせて人が確認する形にすると、 ゼロから作るより早く済みます。判断だけを人に残す、という考え方です。

業務別の時間試算

一般的な中小企業で、事務員1人がフルタイムで担当する業務量から試算すると、 主要な4業務だけで月あたり次の時間になります。

業務 いまの時間(月) AI化後(月)
請求書・見積書の発行 12時間 4時間 8時間
伝票入力・データ集計 15時間 5時間 10時間
電話・メールの一次仕分け 10時間 6時間 4時間
議事録の清書 4時間 1時間 3時間
合計 41時間 16時間 25時間

試算の前提は次のとおりです。

  • 従業員30〜50名規模の会社で、事務員1名が上記4業務を兼務している想定
  • 「AI化後」は、ひな形への転記・入力の下書き・一次回答文の下書きをAIに作らせ、 最終確認だけ人が行う運用に切り替えた場合の目安
  • 判断を伴う業務(交渉・与信・クレーム対応)はこの試算に含めていない
  • 実際の削減時間は、書類の種類数や取引先数によって上下します

月25時間は、1日あたり1時間強に相当します。後任1名分の稼働をすべて埋めることはできませんが、 欠員期間の「回らない」を「回る」に変える分量としては十分です。

欠員のあいだ、何から手を付けるか

後任が決まるまでの数週間から数ヶ月、次の順番で進めると立ち上がりが早くなります。

  1. 退職者の担当業務を書き出す(退職前に本人へのヒアリングができれば最優先)
  2. 手順が決まっている業務から着手する(請求書発行、伝票入力など)
  3. AIに作らせた下書きを、最初の2週間は人が全件確認する(誤りのパターンを把握するため)
  4. 問題が出なければ確認の頻度を下げる(全件確認→抜き取り確認)
  5. 後任が決まったら、AIが作った手順書をそのまま引き継ぎ資料にする

退職者が引き継ぎ書を残さずに辞めるケースは珍しくありません。その場合は、 過去のメールやチャットのやりとりをAIに読ませて「この業務でよく聞かれる質問」 「よく使う言い回し」を洗い出させると、ゼロから聞き取るより早く形になります。

個人情報・判断業務まわりの注意点

事務業務には、取引先や顧客の個人情報が含まれる書類が多く出てきます。 無料版のAIツールでは、入力した内容が学習に使われる設定になっている場合があります。 たとえばChatGPTの無料プランは、会話を「モデルの改善」に使う設定が既定でオンになっており、 使われたくない場合は自分で設定画面からオフにする必要があります (出典: OpenAI公式ヘルプセンター「Data controls FAQ」2026年時点)。 業務で使う前に、使っているツールの設定画面で確認してください。

判断業務については、AIに「下書きを作らせる」ところまでにとどめ、 最終判断は人が行う運用にしてください。特に次の3つは、欠員期間であっても AIに委ねるべきではありません。

  • 与信・取引継続の可否
  • 値引き・支払い条件の変更
  • クレーム対応での謝罪文言・補償の最終回答

よくある質問

Q. 事務員が1人しかいない会社でも、AI化の効果はありますか。 A. 効果はあります。むしろ1人しかいないからこそ、その人が休んだ・辞めたときに 業務が止まりやすく、定型部分をAIに肩代わりさせておく意味が大きくなります。

Q. 後任が決まったら、AIに任せていた業務はどうなりますか。 A. やめる必要はありません。後任にはAIが作った下書きを確認する役割を持たせることで、 入社直後から一定の生産性を出せます。

Q. 退職者が引き継ぎ書を残していない場合、何から始めればよいですか。 A. 過去のメールやチャットのやりとりをAIに読ませ、頻出する質問と回答のパターンを 洗い出させるところから始めます。本人への聞き取りができない状況でも、 やりとりの記録があれば業務の輪郭はつかめます。

Q. AIに入力する際、退職者の個人情報や取引先情報はどう扱えばよいですか。 A. 学習利用の設定を確認したうえで、必要最小限の情報だけを入力してください。 氏名や取引条件をそのまま貼り付ける前に、伏せ字にできないか検討する余地があります。

Q. 経理担当が兼務で事務も見ている場合、優先順位はどう考えますか。 A. 経理側の締め作業(請求書発行、入金確認)を先に固めるのが安全です。 締めが崩れると資金繰りの把握そのものが遅れるため、優先度が最も高くなります。

理解度チェック

読んだ内容の確認に3問だけ。押すと答えが開きます。

Q1. 請求書の発行や入金確認のような定型の事務作業は、AIに任せやすい業務に含まれる。

— 手順が決まっている転記・照合・書類作成はAIに任せやすい業務として本文で挙げている。

Q2. 取引先からの値引き交渉や与信の判断は、AIに任せて後任が決まるまでしのぐべきである。

× — 金額や信用に関わる判断業務は人が担い続ける必要があると本文で分けている。

Q3. 事務員が辞めたら、まず退職者の担当業務を全部AI化する計画を先に立てるべきである。

× — 最初にやるべきは業務の棚卸しであり、AI化はその後の順番だと本文で述べている。