AIで提案書のたたき台を作る手順

提案書のたたき台作りは、「材料を集める」「構成を組む」「文章を書く」 「数字と固有名詞を検証する」「体裁を整える」の5つの手順に分けられます。 このうちAIに任せられるのは、構成案づくりと文章の下書きの2つです。 材料集めと数字の検証、最終判断は人が担います。 一般的な中小企業の営業担当者であれば、提案書1本あたり120〜225分が 60〜105分程度まで縮む計算になります(後述の試算)。 ただし、AIが作った下書きをそのまま出すと事故につながります。 その理由と、任せてよい範囲・任せてはいけない範囲を手順ごとに示します。
提案書作りにかかっている時間の内訳
提案書作成が重く感じるのは、実際には複数の作業が混ざっているためです。 分解すると、次のような内訳になります。
| 作業 | 内容 | 体感の負担 |
|---|---|---|
| 材料集め | 顧客の情報・過去の提案書・商品資料を探して集める | 中 |
| 構成づくり | どの順番で何を伝えるか、章立てを決める | 高 |
| 本文執筆 | 各章の文章を実際に書く | 高 |
| 数字・固有名詞の確認 | 金額・社名・日付に誤りがないか照合する | 中 |
| 体裁調整 | フォント・レイアウト・表のずれを整える | 低〜中 |
「高」がついている構成づくりと本文執筆が、時間を最も食っている作業です。 この2つは「ゼロから考えて書く」作業なので、白紙を前にする時間が長くなりがちです。 AIが得意なのは、まさにこの「白紙から下書きを作る」部分です。
手順1: 材料を集める(人が担当)
AIに構成や文章を作らせる前に、次の材料を人が用意します。
- 相手企業の名前・業種・規模・今回の相談内容
- 相手が抱えている課題(聞き取った内容、メールのやり取りなど)
- 自社が提供できるサービス・商品の情報
- 過去に似た相手に出した提案書(あれば)
ここをAIに任せると、存在しない実績や事例を作られる危険があります。 相手企業の情報や自社の実績は、人が用意した事実だけを使います。 AIには「この情報だけを使って書いてください。ここにない情報は使わないでください」 と明示して渡します。
手順2: 構成案をAIに作らせる
材料が揃ったら、AIに構成案(章立て)を作らせます。 このときのポイントは、いきなり本文を書かせないことです。 先に章立てだけを出させて、順番や過不足を人が確認してから本文に進みます。
一般的な提案書の構成は、次のような流れです。
- 相手の課題の整理(相手が困っていることを言語化する)
- 課題に対する自社の考え方・解決の方向性
- 具体的な提案内容(サービス・商品・進め方)
- 費用・スケジュール
- 導入後のイメージ・次のステップ
AIに「この5つの章立てで、材料をもとに構成案を作ってください」と指示すると、 各章に何を書くかの箇条書きが数分で返ってきます。 この段階で「課題の整理が薄い」「費用の説明が唐突」といった違和感に 気づいておくと、本文を書き直す手戻りが減ります。
手順3: 本文の下書きをAIに書かせる
構成案が固まったら、章ごとに本文の下書きを作らせます。 一度に全部を書かせるより、章ごとに区切って作らせたほうが、 出てきた文章を確認しやすくなります。
このとき、次の2つを毎回セットで指示します。
- 「材料に無い数字・事例・実績は書かない」
- 「言い切れないことは言い切らず、確認が必要な箇所には『要確認』と印を付ける」
この指示を外すと、AIは文章を自然につなげるために、 存在しない数字や事例を作って埋めてしまうことがあります。 下書きの時点では多少の粗さがあってもよいので、 まず「材料に忠実な文章」を優先させます。
手順4: 数字と固有名詞を人が検証する
AIが作った下書きは、人が事実確認をしてから使います。 特に次の4つは、提出前に目で照合します。
- 相手企業の社名・部署名・担当者名の表記
- 金額・数量・期日などの数字
- 自社サービスの名称・料金プランの記載
- 『要確認』の印が残っていないか(消し忘れたまま提出すると信用を落とします)
数字や固有名詞の誤りは、内容の良し悪し以前に「雑な会社」という 印象を与えます。ここだけは時間を惜しまず人が確認する工程です。
手順5: 体裁を整えて仕上げる
文章の検証が済んだら、フォント・余白・表のレイアウトを整えます。 この工程は判断がほとんど要らないため、テンプレートを決めておけば AIに指示して整形させることもできます。 ただし、最終的にPDF化・印刷イメージで一度通しで見る作業は人が行います。 画面上では気づかない表のはみ出しや改ページのずれは、 通し確認をしないと見つかりません。
業務別の時間試算
一般的な中小企業の営業担当者(提案書作成に一定の慣れがある前提)の 業務量から試算すると、目安は次のとおりです。
| 作業 | いまの時間 | AI活用後 | 差 |
|---|---|---|---|
| 材料集め | 20〜30分 | 20〜30分(変化なし) | 0分 |
| 構成づくり | 20〜40分 | 5〜10分 | 15〜30分 |
| 本文執筆 | 60〜120分 | 20〜40分 | 40〜80分 |
| 数字・固有名詞の確認 | 10〜15分 | 10〜15分(変化なし) | 0分 |
| 体裁調整 | 10〜20分 | 5〜10分 | 5〜10分 |
| 合計 | 120〜225分 | 60〜105分 | 60〜120分 |
試算の前提: 提案書1本あたり、ある程度の型ができている営業担当者を想定しています。 初めて提案書を書く相手・複雑な提案内容の場合は、材料集めと確認の時間が これより長くなります。逆に定型的な内容の提案が続く会社では、 テンプレートの整備でさらに時間を圧縮できる余地があります。 実際の削減時間は、提案書の複雑さと担当者の慣れによって変わるため、 自社の実績時間に置き換えて見直してください。
AIに任せてはいけない部分
手順を分けて示した理由は、任せてよい部分と任せてはいけない部分を はっきり線引きするためです。次の3つは、AIに任せると事故につながります。
- 相手企業の実績・事例の創作: 材料に無い成功事例を、AIが自然な文章として 作ってしまうことがあります。実在しない実績を提案書に載せると信用問題になります
- 金額の最終判断: AIは相場観をもとにそれらしい金額を出すことがありますが、 実際の見積もりや値引きの判断は、社内の承認ルールに従って人が決めます
- 相手との関係性を踏まえた言い回し: 過去のやり取りの温度感や、 相手が気にしている点への配慮は、担当者本人でないと調整できません
AIに任せるのは「白紙から言葉を組み立てる」作業までで、 「何を言うか」「いくらにするか」の判断は人が持ち続けます。
提案書作成でつまずきやすい点
AIで提案書のたたき台を作り始めた会社で、よく起きるつまずきは次の2つです。
- 構成案の確認を飛ばして、いきなり本文まで一気に作らせてしまい、 方向性がずれた文章を後から大きく書き直すことになる
- 『要確認』の印を付けさせる指示をせずに文章を作らせ、それらしい数字や事例が 紛れ込んだまま気づかず提出してしまう
どちらも、手順2(構成案の確認)と手順4(数字・固有名詞の検証)を 省略しないことで防げます。時間を縮める工程と、時間をかけて確認する工程を 分けて考えることが、事故を防ぎながら早く作るコツです。
AIで提案書のたたき台を作る手順についてよくある質問
Q. AIに提案書を丸ごと1本作らせても大丈夫ですか。 材料が少ない状態で丸ごと作らせると、存在しない事例や数字で 文章のつじつまを合わせてしまうことがあります。 構成案の確認、章ごとの下書き、数字の検証という手順を踏んだほうが、 事故を防ぎながら時間を縮められます。
Q. どのAIツールを使えばいいですか。 2026年9月時点で、文章生成AIとして広く使われているのはChatGPT・Claude・Gemini・Microsoft Copilotなどです。 料金プランは変更が頻繁なため、契約前に各社の公式サイトで最新の内容を確認してください。 社内で既に契約しているツールがあれば、まずそれで試すのが手早い方法です。
Q. 過去の提案書をAIに読み込ませるのは問題ないですか。 自社が作成した過去の提案書であれば、社内の資料として扱う分には 問題になりにくいですが、相手企業の非公開情報が含まれる場合は、 契約上の秘密保持義務に抵触しないか確認してから使う必要があります。
Q. 構成案を作らせるのに、どんな情報を渡せばいいですか。 相手企業の課題・自社が提供できる内容・希望する章立ての数、の3点を 渡すと、的外れな構成案が出にくくなります。情報が少ないほど、 AIは足りない部分を推測で埋めようとします。
Q. 体裁調整までAIに任せて大丈夫ですか。 レイアウトの指示自体は任せられますが、PDF化や印刷イメージでの 通し確認は人が行う必要があります。画面上のプレビューでは、 表のはみ出しや改ページのずれに気づかないことがあります。


