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経営

運送・物流会社のAI活用|配車と伝票

結論

運送・物流会社でAIに任せやすいのは、「配車表の下書き作成」「運行日報・点呼記録の集計」 「伝票の作成・照合」の3種類です。ドライバーの空き状況と配送先を突き合わせて配車の たたき台を作る、日報のフォーマットを揃えて集計する、納品書と請求書の内容を突き合わせる。 この3つを合わせると、事務担当者1人あたり月20〜30時間前後が空く計算になります(後述の試算)。 一方、配車の最終決定や事故発生時の対応、荷主との価格交渉は任せられません。 道路状況やドライバーの疲労具合など、数字に出ない要素の判断が要るためです。

運送・物流会社の事務作業はどこが重いのか

運送・物流会社の事務作業は、大きく分けると次の3つの流れで発生します。

  • 配車まわり:翌日以降の配送先とドライバー・車両を組み合わせる配車表の作成
  • 運行まわり:出発前点呼の記録、運行日報の回収と集計、走行距離・労働時間の記録
  • 伝票まわり:納品書・受領書の発行、請求書の作成、荷主からの伝票との突き合わせ

これらは配送件数と車両台数が増えるほど作業量も増えますが、 事務担当者の人数はそのままというケースが多く、1人あたりの負担が積み上がりやすい構造です。 特に伝票まわりは、荷主ごとにフォーマットや締め日が違うことが多く、 突き合わせ作業そのものに時間がかかります。

配車表・運行日報・伝票、それぞれどこにAIを使えるか

AIが向いているのは「決まった情報を集めて、決まった形式に整える」作業です。 以下は、一般的な車両10〜20台規模の運送会社の業務量から試算した時間です。

業務 いまの時間(月) AI化後(月)
配車表の下書き作成 15時間 6時間 9時間
運行日報・点呼記録の集計 10時間 3時間 7時間
納品書・請求書の作成 8時間 3時間 5時間
荷主からの伝票との突き合わせ 7時間 3時間 4時間
荷主・ドライバーからの定型問い合わせ対応 5時間 2時間 3時間

試算の前提: 車両15台・事務担当者1名(時給2,200円換算)、配送先と車両の情報が 既存の様式(表計算ソフトや配車システムの出力)で管理されている運用を想定しています。 AIが配車の下書きや集計の整形を行い、本人が最終確認する体制です。 荷主数や伝票フォーマットのばらつきによって、実際の削減幅は変わります。

合計すると、この5業務だけで月28時間前後です。事務担当者1人の勤務時間のおよそ2割にあたります。 浮いた時間は、荷主との調整やドライバーからの相談対応など、判断が要る仕事に回せます。

配車表はどこまでAIに任せられるか

配車業務は、「組み合わせのたたき台を作る部分」と「最終的に確定させる部分」で 任せられる範囲がはっきり分かれます。

AIに任せやすいのは、次のような情報整理の部分です。

  • 明日の配送先一覧と、各ドライバーの空き状況の突き合わせ
  • 過去の配送実績をもとにした、おおよその所要時間の算出
  • 車両の積載可能量と荷物量を照らし合わせた組み合わせ候補の作成

一方で、次の判断はAIに任せられません。

  • 当日の道路状況や渋滞予測を踏まえた、直前の組み替え
  • ドライバーの体調や疲労度を踏まえた配置の調整
  • 荷主からの急な追加依頼への対応順位づけ

配車担当者がこれまで頭の中でやっていた組み合わせ作業のうち、 「情報を並べて候補を出す」部分をAIに任せ、「決める」部分は担当者に残す、という分担です。 AIが出した候補をそのまま確定させるのではなく、必ず人が最終確認してから配車表として配る運用が前提になります。

伝票まわりで任せられる部分

伝票まわりは、荷主ごとにフォーマットが違う分、突き合わせに時間がかかりやすい業務です。 AIに任せやすいのは、次のような作業です。

  • 納品書に記載された品目・数量と、請求書の記載内容の突き合わせ
  • 荷主から送られてくる伝票(PDFや紙のスキャン画像)から、必要な項目を読み取って表に起こす
  • 月末の請求書発行前に、未回収の納品書・受領書がないかの確認

これらは「決まった項目を見て、決まった形式に写す・照らし合わせる」作業のため、AIが下書きを作りやすい領域です。 ただし、荷主との間で金額や条件についてのやり取りが必要になった場合は、担当者が対応します。 AIが作った突き合わせ結果に食い違いが見つかったときの原因確認や、荷主への確認連絡は人の仕事です。

任せられない業務

次の業務は、AIに情報整理や下書き作成を手伝わせることはできても、最終判断を任せることはできません。

業務 理由
配車の最終決定 道路状況・天候・ドライバーの体調など、直前まで変わる要素の判断が要る
事故・トラブル発生時の対応 状況ごとに異なる対応と、荷主・保険会社との調整が要る
荷主との運賃交渉 関係性や取引条件の経緯を踏まえた駆け引きが要る
ドライバーの労務管理の最終判断 拘束時間・休憩の実態を踏まえた個別の配慮が要る
新規荷主の与信判断 取引先の信用力を踏まえた経営判断そのもの

これらに共通するのは、「状況が毎回変わり、決めた人が結果に責任を持つ」業務であることです。 AIに過去の実績データや候補を整理させることはできますが、最終的に決めるのは人です。

導入の順番

運送・物流会社は日々の運行を止められないため、一度にすべての業務を切り替えると混乱が起きやすくなります。 次の順番で進めると、運行への影響を抑えながら定着させやすくなります。

  1. 運行に直接関わらない業務から始める(伝票の突き合わせ、月次の集計作業など)
  2. 配車表は「下書きだけAIに作らせる」形で1〜2週間試し、担当者が確定作業を続ける
  3. 問題がなければ、配車の下書き作成を日常業務に組み込む
  4. 荷主とのやり取りが発生する伝票確認など、外部が関わる業務に対象を広げる

配車のような運行に直結する業務は、いきなり全面的に任せるのではなく、 下書き作成だけを任せる期間を挟むことで、想定外の組み合わせに気づきやすくなります。

つまずきやすい点

運送・物流業特有のつまずきとして、次の3つがよく起こります。

  • 荷主ごとに伝票フォーマットが違う:紙の納品書とデータ提出の荷主が混在していると、AIが読み取れる形に揃える作業が先に必要になります
  • 配車の「勘所」が担当者の頭の中にしかない:長年の経験による組み合わせのコツが記録されていないと、AIの下書き精度が上がりにくくなります
  • 繁忙期にまとめて導入しようとする:新しい仕組みを覚える余裕がない時期に始めると、配車ミスにつながりかねないため定着せずに終わります

いずれも、AIの性能ではなく「導入前の準備」で防げるつまずきです。

よくある質問

Q. 車両が5台以下の小規模な会社でも、配車のAI活用は意味がありますか。 A. 車両数が少ないと1回あたりの削減時間は小さくなりますが、伝票の突き合わせや日報の集計は 車両数に関わらず毎日発生する作業です。まずは伝票まわりから試すのが向いています。

Q. 既存の配車システムや運行管理システムを使っている場合、AIとどう組み合わせますか。 A. 既存システムからの出力データ(CSVなど)をAIに読み込ませて下書きを作らせる形であれば、 システムを入れ替えずに併用できます。連携は必須ではなく、後から検討しても構いません。

Q. AIが作った配車表に誤りがあった場合、誰の責任になりますか。 A. AIの下書きをそのまま配るのではなく、配車担当者が確認・確定させてから使う運用にすることで、 誤りが現場に届く前に止められます。確認の工程を省かないことが前提になります。

Q. ドライバーが高齢でITに不慣れでも、この仕組みは影響しますか。 A. AIが関わるのは事務所内の配車表作成や伝票処理が中心で、ドライバー自身が 新しい機器やアプリを操作する必要は基本的にありません。運行日報の提出方法を変える場合は、 既存の紙やチャットでの提出方法を大きく変えずに、事務所側で読み取る形にすると影響が小さくなります。

Q. 導入にかかる費用はどのくらいですか。 A. 使うツールや車両台数によって幅があります。配車支援・運行管理システム(Cariot、Hacobu MOVOなど)は、公式サイトの料金ページでも具体的な金額を公表しておらず、車両台数や機能に 応じた個別見積もりが中心です【一次情報なし:主要な配車・動態管理システムの公式サイト (cariot.jp/price/、hacobu.jp、いずれも2026年8月確認)を確認しましたが、料金プランを 一律に示す公表資料はなく、いずれも個別見積もりの案内のみでした】。 まずは伝票まわりの1業務で試してから、興味のあるツールに個別見積もりを依頼して 予算を検討することをおすすめします。