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広告・制作会社のAI活用|制作前の調べものを減らす

結論

広告・制作会社でAIに任せやすいのは、企画や制作そのものではなく、**制作に入る前の「調べもの」**です。 競合の広告を集めて並べる、過去の類似案件を探す、構成案・コピー案のたたき台を複数出す。 この3つだけで、担当者1人あたり月16時間前後が空く計算になります(後述の試算)。 一方で、クライアントとの折衝、最終的なクリエイティブの良し悪しの判断、ブランドの世界観を決める部分は AIに任せられません。この記事では、どこまで任せられるかを業務別に整理します。

広告・制作会社で時間を食っているのは、制作の前後にある作業

広告・制作の仕事は「企画を考える時間」より、その前後にかかる作業のほうが実は長いことがあります。

  • オリエン(依頼内容の確認)のたびに、競合の広告事例をゼロから検索して集めている
  • 過去に似た案件がなかったか、社内のフォルダやメールを手作業で探している
  • 構成案・コピー案を出すとき、最初のたたき台をゼロから1人で書いている
  • 提案書に載せる市場データや事例を、毎回別々のサイトを回って集めている
  • 制作物の初稿チェック(誤字・表記ゆれ・レギュレーション違反)を人の目だけで行っている

これらは「クリエイティブの中身を考える」作業ではなく、考え始める前の準備です。 準備に時間を取られるほど、実際に企画を練る時間が削られます。

広告・制作会社でAIに任せやすい業務

1. 競合・類似事例の一次収集

「この業界の広告で、こういう切り口の事例を集めて」という指示は、AIが得意とする作業です。 人が1件ずつ検索して見て回るより、まず候補を広く集める段階を任せられます。 最終的にどれを参考にするかの判断は、担当者が行います。

2. 過去案件・資料の検索

社内に蓄積された過去の提案書・実績資料が整理されていれば、 「似た業種・似た予算感の案件を探して」という探し方をAIに任せられます。 探す手間が減ることで、過去の知見を使い回しやすくなります。

3. 構成案・コピー案の複数パターン出し

ゼロから1案を絞り出すのではなく、まず方向性の違う複数のたたき台を出させ、 そこから担当者が選んで磨き込む、という順番に変えられます。 最初の1案を出すまでの時間が短くなります。

4. 提案書の下書き・体裁づくり

市場データや過去実績をもとにした提案書の骨組み(章立て・構成)は、AIに下書きさせて 担当者が加筆修正する形に変えられます。ゼロから書くより着手が早くなります。

5. 初稿の一次チェック

誤字脱字、表記ゆれ、社内レギュレーション(禁止表現・トーン)との照合は、 最終判断は人が行うとしても、一次チェックをAIに任せることで見落としを減らせます。

広告・制作会社の業務は、AI活用でどれくらい時間が変わるのか

一般的な業務量から試算した目安です。実際の削減時間は、案件規模や社内の資料整備状況によって変わります。

業務 いまの目安時間(月) AI活用後の目安時間(月)
競合・類似事例の収集 6時間 2時間 4時間
過去案件・資料の検索 4時間 1時間 3時間
構成案・コピー案のたたき台作成 8時間 4時間 4時間
提案書の下書き作成 6時間 3時間 3時間
初稿の一次チェック 4時間 2時間 2時間
合計 28時間 12時間 16時間

試算の前提

  • 企画・制作担当者1人あたりの月間業務時間を基準に、上記5業務にかかる時間を目安として設定
  • 「AI活用後」は、AIに調べもの・たたき台を作らせ、担当者が確認・選定・修正する時間を含む
  • クライアントとの折衝、最終クリエイティブの決定、ブランド戦略の策定はこの表に含めていない
  • 実際の削減時間は案件の規模・社内資料の整備状況によって変わるため、目安として扱う

月16時間は、1週間あたり半日弱にあたります。空いた時間がそのまま企画を練る時間に 回るかどうかが、削減効果を実感できるかの分かれ目です。

広告・制作会社でAIに任せてはいけない業務

任せる範囲を広げすぎると、クリエイティブの質やクライアントとの信頼関係を損なうおそれがあります。

任せてよい 任せてはいけない
競合・類似事例の一次収集 クライアントとの折衝・要望の最終確認
過去案件・資料の検索 最終的なクリエイティブの採否判断
構成案・コピー案のたたき台 ブランドの世界観・トーンの決定
提案書の下書き・体裁づくり 契約金額・条件の交渉
初稿の一次チェック 著作権・商標に関わる最終確認

AIが出すのは「候補」と「たたき台」までです。選ぶ責任は担当者に残ります。 特にクリエイティブの最終判断をAI任せにすると、案件ごとの独自性が薄れる原因になります。

著作権・商標の扱いは特に注意が必要

広告・制作の分野は、他の業務よりも著作権・商標のリスクが高い領域です。 AIが生成した画像・文章をそのまま制作物に使う場合、権利関係の確認が必要になることがあります。

著作権については、AI利用者が既存の著作物を認識していなかった場合でも、その著作物を学習したAIから 類似した生成物ができたときは、通常は元の著作物に依拠したとみなされ、著作権侵害になり得るという整理が 示されています(文化庁「AIと著作権に関する考え方について」令和6年3月15日)。 商標についても、AIが生成したロゴや文言であること自体は特別扱いされず、既存の登録商標との類似性が あれば通常の商標権侵害と同じ扱いになります(特許庁 産業構造審議会知的財産分科会 第12回商標制度小委員会 資料、2025年6月13日公表)。生成AIを使ったから確認を省いてよい、という扱いにはならない、というのが 両者に共通する考え方です。

参考にする事例やコピーがある場合も、既存の広告表現との類似性には人の目で確認する工程を 残しておくことが安全です。

何から始めればいいか

いきなり制作フローの全体を変えず、次の順番で始めるのが現実的です。

  1. まず「調べもの」だけを任せる(競合事例集め、過去案件検索など、失敗しても影響が小さいもの)
  2. 1〜2案件試して、たたき台の質と時間の変化を確認する
  3. 効果が見えたら、構成案づくりなど企画寄りの工程に広げる
  4. 著作権・商標のチェック手順を、AI利用を前提に社内で決めておく

最初から企画そのものをAIに任せようとせず、「調べもの」から始めることで、 クリエイティブの質を落とさずに時間を空けられます。

よくある質問

Q. AIに作らせたコピー案をそのままクライアントに提出してよいですか。

そのままの提出は避けてください。他の広告表現との類似性、事実関係の誤りがないかを 担当者が確認したうえで、あくまでたたき台として扱う運用が安全です。

Q. AIが集めた競合事例は、そのまま信用してよいですか。

情報が古い、あるいは実在しない事例が混じることがあるため、重要な事例は 元のサイトや掲載媒体で裏取りしてから資料に使う必要があります。

Q. 小さな制作会社でも導入する意味はありますか。

あります。人数が少ない会社ほど、1人が調べものから制作まで担当していることが多く、 調べものの時間が空くことの影響が相対的に大きくなります。

Q. AI生成物を使うとクライアントに嫌がられませんか。

「調べものやたたき台の段階で使っている」ことと「最終成果物をAIに丸投げしている」ことは別です。 どの工程まで使っているかを説明できる状態にしておくことが、信頼を保つ前提になります。

Q. デザインの領域にもAIは使えますか。

構図の候補出しやラフ案の複数パターン作成には使えます。ただし最終的なビジュアルの 完成度と権利関係の確認は、人の作業として残す必要があります。