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経営

IT導入補助金はAIツールに使えるか|対象と申請の流れ

結論

IT導入補助金は、ITツールを導入する費用の一部を国が補助する制度です。 2026年度から名称が「デジタル化・AI導入補助金2026」に変わりました(正式名称は 「中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金」。事務局は「ITツールの導入にとどまらず、 デジタル化の推進とAIの活用が重要」という考え方から名称を変更したと説明しています。 出典:事務局公式サイト https://it-shien.smrj.go.jp/news/40013 )。 生成AIツールが対象になるかどうかは、ツール単体では決まりません。 そのツールが補助金の「IT導入支援事業者」を通じて登録された対象ツールに 入っているかどうかで決まります。対象かどうかは申請の枠によっても変わるため、 自社が使いたいツールが今の枠で対象になっているかを、申請前に個別に確認する必要があります。 補助率・上限額・枠の名称は年度ごとに変わるため、本記事の数字は2026年8月時点の 情報です。以降は分かりやすさのため「IT導入補助金」と表記します。

IT導入補助金とはどんな制度か

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者がITツールを導入する際の費用の一部を 国が補助する制度です。会計ソフト、受発注システム、勤怠管理システムなど、 業務効率化につながるソフトウェアが主な対象として想定されています。

この制度の特徴は、事業者が直接ツールを買って申請するのではなく、 「IT導入支援事業者」と呼ばれる登録事業者を通じて申請する仕組みになっている点です。 ツールメーカーや販売代理店がIT導入支援事業者として登録し、 自社の製品を補助金の対象ツールとして事務局に登録しておく必要があります。

つまり、どんなに便利なAIツールでも、そのツールの提供元(または代理店)が IT導入支援事業者として登録し、対象ツールリストに載せていなければ、 このツールを使って申請することはそもそもできません。

生成AIツールは対象になるのか

結論から言うと、「生成AIツールというカテゴリ」が一律に対象・対象外と 決まっているわけではありません。 個々のツールが対象ツールリストに 登録されているかどうかで判断します。

補助金には複数の申請枠があり、枠によって対象とするツールの性質が異なります。 2026年度の枠構成は次の5つです(出典:事務局公式サイト https://it-shien.smrj.go.jp/about/ )。

  • 通常枠:デジタル化目的のソフトウェア・システム導入全般
  • インボイス枠(インボイス対応類型):インボイス制度対応の会計・受発注・決済ソフトやPC等
  • インボイス枠(電子取引類型):インボイス対応の受発注システムを商流単位で導入する場合
  • セキュリティ対策推進枠:サイバーインシデント対策ツールの導入
  • 複数者連携デジタル化・AI導入枠:複数企業が連携して行う地域DXや生産性向上の取り組み

過去の制度設計では、業務プロセスのうち複数の工程をカバーするソフトウェアや、 会計・受発注・決済など特定の業務領域のシステムが優先的に対象とされてきました。 2026年度からは、対象ツールの検索で「AI機能を有するツール」による絞り込みができる ようになり、AI機能を持つツールにはその旨が明記される仕組みに変わりました。 ただし対象になるのは、IT導入支援事業者がそのツールを「AI機能保有」として 事務局に登録した場合に限られます(出典:事務局公式サイト https://it-shien.smrj.go.jp/news/40013 )。 チャット形式の生成AIツール単体(汎用的な文章生成・画像生成ツールなど)が 主要な対象カテゴリに含まれるかどうかは、年度の公募要領によっても変わるため、 最終判断は個別に確認してください。

一方で、会計ソフトや顧客管理システムにAI機能(自動仕訳、問い合わせの自動応答など)が 組み込まれた製品であれば、そのソフトウェア自体が対象ツールとして登録されている限り、 AI機能の有無にかかわらず対象になる可能性があります。 「AIツールかどうか」より「対象ツールリストに載っているソフトウェアかどうか」を 先に確認する方が、話が早くなります。

対象になりやすいパターン・なりにくいパターン

パターン 対象になりやすいか
会計・受発注・勤怠管理などの業務システムにAI機能が搭載されている IT導入支援事業者経由で登録されていれば対象になりやすい
チャット型の汎用AIツール(文章生成・要約など)を単体で契約する場合 対象ツールリストへの登録有無を個別確認する必要がある。対象外の枠が多い年度もある
自社専用にAIを組み込んだシステムを外部に開発してもらう場合 開発を請け負う会社がIT導入支援事業者であれば対象になる場合がある。個別確認が必須
すでに契約済みのツールを後から申請する場合 交付決定前の契約は対象外になるのが原則。順番を間違えると補助を受けられない

対象になるかどうかの最終判断は、IT導入支援事業者または事務局の 公式情報で確認してください。この表は傾向の整理であり、個別のツールの 対象可否を保証するものではありません。

申請の流れ

IT導入補助金の申請は、大まかに次の順番で進みます。

  1. gBizIDプライムを取得する:法人・個人事業主向けの共通認証システムです。 マイナンバーカードを使うオンライン申請は最短即日で発行されます。 印鑑証明書などを使う書類での申請は、書類到着後、最大1か月以内の発行です (出典:gBizID公式FAQ https://gbiz-id.go.jp/top/faq/faq.html )。 公募締切が近い時期は審査が混み合う可能性があるため、早めに準備します。
  2. IT導入支援事業者を探す:導入したいツールを扱うIT導入支援事業者に相談します。 ツールベンダーに直接問い合わせると、担当のIT導入支援事業者を紹介されることが多いです。
  3. 交付申請を行う:IT導入支援事業者と共同で、事業計画や導入するツールの内容を 申請システム上で提出します。
  4. 交付決定を待つ:審査を経て交付が決定してから、初めてツールの契約・支払いに進みます。 交付決定前に発注・契約・支払い等を行った場合は、補助金の交付を受けることができません。 (出典:事務局公式サイト「交付決定後に必要な手続き」 https://it-shien.smrj.go.jp/aftergrantdecision/measures/ )
  5. ツールを導入し、実績報告を行う:導入後、指定の期間内に実績報告を提出します。
  6. 補助金が交付される:実績報告の審査を経て、補助金が支払われます。

申請から交付決定まで、また交付決定から実績報告までには、それぞれ一定の期間が かかります。2026年度の通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠は、 1次締切が2026年9月29日17:00、交付決定予定日が2026年11月9日、 実績報告期限が2027年4月30日17:00です(複数者連携デジタル化・AI導入枠は 1次締切2026年10月30日・実績報告期限2027年5月31日と別日程。以降の公募回は 事務局サイトで随時更新される予定です。出典:事務局公式サイト https://it-shien.smrj.go.jp/schedule/ )。 「使いたい時期」から逆算して早めに動く必要があります。

補助率・補助額の目安

補助率・上限額は枠ごとに設定されており、年度によって変更されます。 現時点で確定した数字として書くことができないため、次のように整理します。

補助率 補助額の目安
通常枠 1/2以内(一定の要件を満たす場合は2/3以内) 5万円〜450万円(業務プロセス数で変動)
セキュリティ対策推進枠 1/2以内(小規模事業者は2/3以内) 5万円〜150万円
インボイス枠(インボイス対応類型)・ソフトウェア 50万円以下は3/4以内(小規模事業者は4/5以内)、50万円超〜350万円以下は2/3以内 上限350万円
インボイス枠(インボイス対応類型)・PC等ハードウェア 1/2以内 10万円〜20万円以下
インボイス枠(電子取引類型) 2/3以内(中小企業・小規模事業者等)、1/2以内(その他の事業者等) 下限なし〜350万円以下
複数者連携デジタル化・AI導入枠 枠ごとに個別に設定 枠ごとに個別に設定

(出典:事務局公式サイト 通常枠 https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/normal/ 、 セキュリティ対策推進枠 https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/security/ 、 インボイス枠(インボイス対応類型) https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/digitalbase/ 、 インボイス枠(電子取引類型) https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/digitalbased_invoice/ )

通常枠の対象経費は、ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)が必須で、 機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ、導入コンサルティング、導入設定・研修、 保守サポートなどが加えられます。ハードウェアが対象になるのは、インボイス枠など 限られた枠のみです。

複数者連携デジタル化・AI導入枠は、連携する企業数や取り組み内容によって 補助額が個別に設定されます。参加を検討する場合は、事務局または申請予定の IT導入支援事業者に確認してください。

金額を試算に使う場合は、公募開始時点の最新の公募要領で確認してから 予算計画を立ててください。

AI活用で見込める業務時間の試算

補助金の対象になるかどうかとは別に、実際にAIツールを使い始めた場合に どの程度の時間が変わるかを、一般的な中小企業の業務量から試算します。

業務 いまの時間(月・1人あたり) AI活用後の時間(目安)
問い合わせメール・チャットへの一次回答作成 12時間 5時間 7時間
会計伝票・請求書のデータ入力 8時間 3時間 5時間
社内向け資料・議事録の下書き作成 6時間 2時間 4時間

前提:従業員数十名規模の会社で、担当者1名がこれらの業務を兼務している場合の目安です。 削減時間は、扱う文書の形式のばらつきや、AIツールの導入・定着にかかる学習期間によって 変わります。与信判断や最終的な承認など、判断そのものが必要な業務はこの試算に含めていません。

補助金はツールの導入費用の一部を軽減する仕組みであり、業務が減る量そのものを 保証するものではありません。「補助金が出るから導入する」ではなく、 「この業務を減らしたいから、対象になるツールを探す」という順番で検討する方が、 導入後に使われなくなるリスクを減らせます。

申請でよくあるつまずき

  • 契約を先に済ませてしまう:交付決定前にツールを契約・支払いすると、 原則として補助対象から外れます。急いでツールを使い始めたい場合は、 補助金を使わずに導入するか、スケジュールを見直す必要があります
  • gBizIDの取得を後回しにする:申請の入り口で必要になるため、 検討を始めた段階で並行して取得を進めておく方が、公募締切に間に合いやすくなります
  • ツール選定を先に終わらせてしまう:使いたいツールを決めてから IT導入支援事業者を探すと、そのツールが対象ツールに登録されていない場合に 選び直しが発生します。ツール選定とIT導入支援事業者探しは並行して進める方が手戻りが少なくなります
  • 実績報告の期限を見落とす:交付決定後、指定の期間内に導入と実績報告を 終える必要があります。導入作業が遅れると期限に間に合わなくなることがあります

FAQ

Q. ChatGPTのような汎用AIツールの利用料は補助対象になりますか。 A. ツール単体の性質だけでは判断できません。そのツールを扱うIT導入支援事業者が 「AI機能保有」のツールとして事務局に登録しているかどうかで決まります。 2026年度からはAI機能を持つツールに「AIツール」の表示が付くようになったため、 公式のITツール検索で確認できます。2026年8月時点で、公式のITツール検索を 「ChatGPT」で検索すると、ChatGPT Plus・ChatGPT Pro・ChatGPT Business・ ChatGPT Goなど52件が登録済みとして表示されます。ただし同じプランでも 登録しているIT導入支援事業者ごとに価格表示が異なるため、「ChatGPTなら 使える」ではなく、自社が契約するIT導入支援事業者・プランが登録されているかを 個別に確認する必要があります(出典:事務局公式サイト ITツール検索 https://it-shien.smrj.go.jp/search/ 、2026年8月時点で「ChatGPT」検索・実測)。

Q. すでに契約して使っているAIツールを、後から補助金の対象にできますか。 A. 原則としてできません。交付決定前の契約・支払いは対象外になるのが基本的な ルールです。これから契約するツールについて、先に交付決定を受ける必要があります。

Q. gBizIDが無くても申請できますか。 A. 申請の入り口としてgBizIDプライムの取得が必要になります。取得には日数が かかる場合があるため、検討を始めた段階で申請を進めておくことをおすすめします。

Q. IT導入支援事業者はどうやって探せばいいですか。 A. 使いたいツールのベンダーに問い合わせると、提携しているIT導入支援事業者を 紹介されることが多いです。事務局公式サイトの「ITツール・IT導入支援事業者検索」 ページ( https://it-shien.smrj.go.jp/search/ )からも、ツール名や事業者名で 検索できます。

Q. 補助金の審査に落ちることはありますか。 A. あります。事業計画の内容や申請書類の不備によって不採択になる場合があるため、 IT導入支援事業者と内容をすり合わせたうえで申請することが望まれます。


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