「社内にAIに詳しい人がいない」福岡の会社が最初にやること

社内にAIに詳しい人がいなくても、AI活用は始められます。 最初にやることは、ツールを選ぶことでも、詳しい人を採用することでもありません。 いまある業務のうち、どれが「決まった手順の繰り返し」で、どれが「判断が要る仕事」かを 仕分けることです。この仕分けさえできれば、ツール選びは後からでも間に合います。 逆に、詳しい人がいないままツールから選ぶと、使われずに終わる確率が高くなります。
「詳しい人がいない」は始めない理由にならない
AI活用の相談を受けると、最初に出てくる言葉はたいてい同じです。 「うちには詳しい人間がいないので、まだ早い」。
しかし、いま多くの会社で使われている生成AIの操作自体は、 チャット画面に日本語で質問や指示を打ち込むだけで、専門知識を必要としません。 必要なのはプログラムの知識ではなく、「うちのどの作業を、どういう指示で任せるか」を 決める力です。これは技術者よりも、現場の業務を知っている人のほうが得意な仕事です。
詳しい人がいないことが問題になるのは、ツールの機能比較や、 社内システムとの連携など、技術的な検討が必要になった段階からです。 最初の一歩である「業務の棚卸し」には、技術知識は要りません。
最初にやるのは「ツール選び」ではなく「棚卸し」
順番を間違えると、遠回りになります。よくある間違った順番はこうです。
- 話題のAIツールを契約する
- 誰が何に使うかを後から考える
- 使う場面が決まらないまま、契約だけが残る
正しい順番は逆です。
- いまの業務を「定型」と「判断」に仕分ける
- 定型作業のうち、時間がかかっているものを選ぶ
- その作業に合うツールを、そこで初めて選ぶ
ツールは、任せたい作業が決まってから選ぶものです。 作業が決まっていない段階でツールを決めると、機能の多さや値段で選んでしまい、 実際に使う場面が最後まで定まりません。
業務の仕分け方
仕分けの基準は1つだけです。「毎回、同じ手順でできるか」。
- 手順が毎回同じ、または似ている → AIに任せられる可能性が高い
- 毎回、状況を見て判断している → AIには任せにくい
| 分類 | 具体例 |
|---|---|
| 任せられる可能性が高い | 議事録の下書き、問い合わせメールの一次回答案、請求書・見積書の下書き、資料の要約 |
| 任せにくい | 価格交渉、クレーム対応、採用の合否判断、取引先との折衝 |
この仕分けは、経営者や現場の責任者が1人で1時間もあればできます。 専門知識ではなく、自社の業務を知っていることが条件だからです。
何時間減るか
一般的な業務量から試算すると、任せられる作業を洗い出して実行した場合の 時間の目安は次のとおりです。
| 業務 | いまの時間(月・1人あたり) | AI化後の時間(目安) | 差 |
|---|---|---|---|
| 議事録・打ち合わせメモの作成 | 6時間 | 1.5時間 | 4.5時間 |
| 問い合わせメールの一次回答案の作成 | 8時間 | 3時間 | 5時間 |
| 見積書・請求書などの下書き | 5時間 | 2時間 | 3時間 |
| 社内資料・議事の要約 | 4時間 | 1時間 | 3時間 |
試算の前提: 従業員10〜100名規模の会社で、事務作業を兼務する担当者1人あたりの 月間作業時間を想定しています。AIが下書き・要約を作り、担当者が内容を確認・修正する 運用を前提にした目安です。実際の削減幅は業務量や社内ルールによって変わります。
4つの業務すべてに手をつけた場合、1人あたり月15時間ほど空く計算になります。 これは、専任の担当者を置かなくても得られる時間です。
社内の担当者は「詳しい人」でなく「窓口になれる人」
情報システム部門がない会社でも、担当を1人決めたほうが進みます。 ただし、その人に求める条件は「AIに詳しいこと」ではありません。
- 現場の業務内容を把握している
- 「この作業、任せられそうか」を判断できる
- 使ってみた結果を、他の社員に共有できる
技術的な知識は、使いながら後から身につきます。 最初から詳しい人を社内で探そうとすると、見つからないまま止まります。
外部に相談する場合の窓口
自社だけで進めるのが不安な場合、公的な相談窓口や支援制度を利用できることがあります。
2026年8月時点で、福岡県内の中小企業が無料で相談できる窓口には次のものがあります。
- 福岡県よろず支援拠点:国が設置した無料の経営相談所で、IT分野の専門家も在籍しています(福岡県よろず支援拠点公式サイト https://yorozu-fukuoka.go.jp/)
- 福岡県中小企業DX推進センター:2025年10月に開設された、デジタル化による生産性向上・業務プロセス変革を無料で伴走支援する窓口です(福岡県庁公式サイト https://www.pref.fukuoka.lg.jp/press-release/dx-center-open.html)
- 福岡市中小企業サポートセンター:福岡市内の中小企業向けの経営相談窓口です(福岡市公式サイト https://www.city.fukuoka.lg.jp/keizai/keieishien/)
補助金では、国の「デジタル化・AI導入補助金2026」(旧IT導入補助金)が、AIを含むITツールの導入費用の一部を補助する制度として実施されています。 補助額はツールの数に応じて5万円〜450万円、補助率は1/2以内です(中小企業庁公式サイト https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/hojyokin/kobo/2026/260310001.html)。 公募回や締切は時期によって変わるため、申請を検討する際は運営元(中小機構)の公式サイト(https://it-shien.smrj.go.jp/)で最新の締切を確認してください。
相談窓口を使う場合も、「何に困っているか」ではなく 「どの業務を減らしたいか」を先に決めてから相談したほうが、話が早く進みます。
最初の1か月でやること・やらないこと
| やること | やらないこと |
|---|---|
| 業務を「定型」「判断」に仕分ける | 複数のツールを同時に契約する |
| 1つの定型作業だけを選んで試す | 全部署に一斉導入する |
| 使った結果を記録する | 「詳しい人」が見つかるまで待つ |
最初の1か月は、効果を確かめる期間と割り切ります。 1つの業務で効果が確認できてから、次の業務に広げるほうが、 社内の反発も少なく、失敗したときの被害も小さく済みます。
よくある失敗
- いきなり全社員に使わせる:誰も使い方を確認しないまま広げると、 「よくわからないので使わない」社員が大半になります
- 詳しい人を採用してから始めようとする:採用には数か月かかります。 その間、業務の仕分けだけは自社で先に進められます
- 効果を測らない:何時間減ったかを記録しないと、 次の業務に広げる判断材料が残りません
よくある質問
Q. 社内に1人もAIに詳しい人間がいませんが、それでも始められますか。 始められます。最初に必要なのは技術知識ではなく、 自社のどの業務が「決まった手順の繰り返し」かを把握していることです。 これは現場の責任者のほうが得意な作業です。
Q. 何から手をつければいいか分かりません。 まず、社内の業務を1つずつ「毎回同じ手順か」「毎回判断が要るか」で仕分けてください。 仕分けが終わったら、時間がかかっている定型作業から1つだけ選んで試します。
Q. 詳しい人を採用してから始めたほうが安全ではないですか。 採用には求人から入社まで数か月かかります。 その間、業務の仕分けと、任せる作業の洗い出しは自社の人員だけで進められます。 採用を待ってから始めると、その分だけ着手が遅れます。
Q. 福岡でAI導入の相談ができる窓口はありますか。 福岡県よろず支援拠点、福岡県中小企業DX推進センター、福岡市中小企業サポートセンターなど、 無料で相談できる窓口があります(詳細は前述の「外部に相談する場合の窓口」を参照)。 相談する前に、自社でどの業務を減らしたいかを決めておくと話が早く進みます。
Q. 1か月でどのくらい効果が出ますか。 一般的な業務量から試算すると、定型作業を1〜2個AIに任せるだけで、 1人あたり月数時間から10時間前後が空く計算になります(前述の試算表を参照)。 実際の効果は業務内容によって変わるため、自社で記録して確認してください。