Excelの転記作業をなくす|AIで置き換えられる部分と無理な部分

Excelの転記作業のうち、AIに任せられるのは「決まった場所から決まった場所へ写す」作業です。 請求書の金額をExcelに書き写す、注文メールの内容を管理表に転記する、といった作業がこれにあたります。 一般的な業務量から試算すると、転記が多い担当者で月6〜10.5時間ほどの削減余地があります(後述の試算表参照)。 一方、書式がバラバラな紙の書類を読み取る作業や、転記した数字の最終チェックは、 今の技術ではまだ人の確認が必要です。この記事では、どこまでが任せられて、どこからが無理かを分けて説明します。
Excelの転記作業とは、具体的に何を指すか
「転記」とひとくくりにされる作業には、実は性質の違う3種類が混ざっています。
- 単純転記: 請求書や納品書に書かれた数字を、そのままExcelのセルに書き写す作業
- 変換転記: 別のフォーマットの表を、自社の管理表の形式に合わせて写し替える作業
- 判断つき転記: 内容を読んで分類してから書き写す作業(例: 問い合わせ内容を種類別に振り分けて記録する)
このうちAIに任せやすいのは単純転記と変換転記です。判断つき転記は、分類の基準があいまいな場合は 人の確認が要ります。以下、この3種類ごとに削減時間の目安を示します。
転記作業は、月何時間の削減が目安か
Excel転記を主な業務の一部として担当している社員を想定した試算です。
| 転記の種類 | いまの時間(月・1人あたり) | AI化後の時間 | 差 |
|---|---|---|---|
| 単純転記(請求書・納品書など) | 8時間 | 2時間 | 6時間 |
| 変換転記(他部署・取引先からの表の形式合わせ) | 5時間 | 2時間 | 3時間 |
| 判断つき転記(分類してから記録) | 4時間 | 2.5時間 | 1.5時間 |
| 合計 | 17時間 | 6.5時間 | 10.5時間 |
試算の前提: 週5日勤務・1日あたり転記作業に1時間弱を充てている担当者を想定しています。 書類がPDFやメール添付で届き、手書きではないことを前提にしています。手書き書類が混ざる場合は AI化後の時間が長くなります(後述)。転記量が少ない会社では、この時間はもっと小さくなります。
AIに置き換えられる部分
決まった書式の書類からの数値転記
請求書・納品書・領収書など、毎回ほぼ同じ位置に同じ項目が書かれている書類は、AIが項目を読み取って Excelに書き出す作業に向いています。取引先ごとに書式が数パターンに収まっているなら、精度は実用に足ります。
複数の表を1つの形式にまとめる作業
部署ごと・店舗ごとにバラバラな形式で送られてくる表を、自社の管理表の列に合わせて並べ替える作業も AIに任せやすい部分です。列の対応関係を一度決めてしまえば、毎回同じ変換を繰り返すだけになります。
定型的な分類を伴う転記
「問い合わせ内容を『料金』『不具合』『その他』に分けて記録する」のように、分類の基準が はっきり決まっている場合は、AIに一次分類をさせて人が最終確認する形が使えます。 基準があいまいだと誤分類が増えるため、先に分類ルールを言葉にしておく必要があります。
AIに任せるのが無理な部分
書式が毎回変わる手書き書類
手書きの伝票、走り書きのメモ、レイアウトが取引先ごとにまったく異なる書類は、 読み取り精度が安定しません。誤読に気づかないまま転記されるリスクのほうが、 手作業より高くなる場合があります。
金額・数量など、誤りが業務に直結する数字の最終確認
AIが読み取った数字をそのまま経理処理や発注に使うのは、現時点では危険です。 金額の桁違い、単位の読み違いは起こり得るため、最終確認は人が行う前提にしてください。
分類の基準があいまいな判断
「重要かどうか」「緊急かどうか」のように、担当者の経験で判断している分類は、 AIに任せると基準がぶれます。基準を明文化できていない業務は、先に基準を決める作業のほうが優先です。
導入する前に確認すべきこと
転記作業をAIに任せる前に、次の3点を確認してください。
| 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 元の書類はPDF・画像として保存されているか | 紙の原本しかない場合は先にスキャンする工程が必要になる |
| 書式のパターンは何種類あるか | パターンが多いほど精度が下がりやすい。何種類までなら実用的かの統一的な目安は【一次情報なし】(ベンダー各社の公式ページを確認したが、共通の基準は示されていない) |
| 転記先のExcelの列は固定されているか | 列が頻繁に変わる管理表は、変換のたびに設定し直しが必要になる |
これらが整っていない状態でAI化を進めると、確認・修正の手間がかえって増えることがあります。 まず1〜2週間、対象の転記作業がどのくらいの時間かかっているかを記録してから始めることをすすめます。
試算どおりにならないケース
次のような場合は、この記事の試算よりも削減幅が小さくなります。
- 取引先ごとに書式がまったく異なり、パターン数が多い
- 手書きの書類が一定量混ざっている
- 転記のたびに担当者の判断が入る項目が多い
逆に、書式が限られた書類を毎月大量に処理している会社では、この試算より大きな削減が出ることもあります。
Excelの転記作業のAI化でよくある質問
Q. 手書きの書類はAIで読み取れませんか。 読み取れる場合もありますが、精度は印字された書類より落ちます。手書きが多い会社は、 まず印字書類の転記から始めて、手書き分は当面手作業で残す進め方をすすめます。
Q. 転記ミスがあった場合、誰の責任になりますか。 AIの出力を確認せずに使った場合は、確認しなかった側の責任になります。 AIに任せた後も、最終確認の担当者を必ず決めておく必要があります。
Q. どのくらいの書類量から自動化を検討すべきですか。 件数の明確な下限はありません。「月間の転記件数×1件あたりの作業時間×時給」で いまの転記コストを計算し、ツールの月額費用と比べて判断するのが実務的です。 費用の目安としては、国内のクラウド型AI-OCRサービスの一例(DX Suite、2026年8月時点)では、 月額40,000円〜のプランに無料枠が付き、超過分は1件あたり数円〜の従量課金という体系です (出典: DX Suite公式料金ページ)。料金体系はサービスによって 月額固定・従量課金・その混合と異なるため、複数社の見積もりを比較することをすすめます。
Q. Excelのマクロと何が違いますか。 マクロは書式が完全に固定された作業の自動化に向いています。AIは書式が多少揺れても 項目を認識できる点が異なります。書式が完全に一定ならマクロのほうが安定する場合もあります。
Q. 導入までにどのくらいの期間がかかりますか。 書類のパターン数や整備状況によって変わります。業界共通の期間目安を示す公的な統計は 見当たりませんでした【一次情報なし】。参考として、大手クラウド型AI-OCRサービスの一例では 1か月間の有償トライアルを経て本契約に進む流れが用意されています (出典: DX Suite公式サイト)。まずは対象業務を1つに絞って試すことをすすめます。
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