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経営

中小企業がAIで最初にやるべき業務はどれか

結論

最初にやるべきは「判断がいらず、量が多い」業務です。経理の仕訳入力、営業事務の見積書下書き、 総務の議事録作成がこれにあたります。逆に、与信判断・採用の合否・クレーム対応のように 人の判断がそのまま結果を左右する業務は、最初の1本には向きません。 迷ったら、社内で最も「毎月同じことを繰り返している」業務から手を付けます。

何を基準に選ぶべきか

業務を選ぶ基準は2つだけです。どちらも満たす業務が、最初の1本になります。

  1. 判断がいらないか。 決まった手順どおりに処理すれば終わる業務は向いています。 逆に「この案件は特別扱いすべきか」のような判断が入る業務は向いません。
  2. 量が多いか。 月に1回しか発生しない業務は、AI化しても効果が小さく実感しにくくなります。 毎日・毎週繰り返す業務ほど、削減の効果が積み上がります。

この2つを両方満たす業務は、たいてい「転記」「照合」「定型文書の下書き」のどれかです。 逆にどちらか一方でも欠けると、最初の1本には向きません。

業務別に見ると、経理・営業事務・総務が上位に来る

主な業務を「判断の要否」「発生頻度」の2軸で並べると、次のようになります。

業務 判断の要否 発生頻度 最初の1本への向き
経理(仕訳入力・請求書突き合わせ) 低い 毎日〜毎週 向いている
営業事務(見積書・議事録の下書き) 低い 毎週 向いている
総務(社内文書・規程の下書き) 低い 毎週〜毎月 向いている
人事(求人票・面接日程調整) 中程度 月に数回 一部だけ向く
顧客対応(よくある質問への一次回答) 中程度 毎日 一部だけ向く
与信判断・採用の合否 高い 不定期 向かない
クレーム対応 高い 不定期 向かない

表の見方: 「判断の要否」は、その業務の結果が会社や取引先に与える影響の大きさを指します。 「発生頻度」が高くても「判断の要否」が高い業務(顧客対応の一部、クレーム対応)は、 AIに任せるのは下書きまでにとどめ、最終判断は人が行う前提です。

試しに経理業務だけで時間の差を試算すると、次のようになります。

業務 いまの時間(月・1人あたり) AI化後の時間
仕訳入力 6時間 2時間 4時間
請求書の突き合わせ 4時間 1.5時間 2.5時間
月次レポートの下書き 4時間 1.5時間 2.5時間
合計 14時間 5時間 9時間

試算の前提: 会計ソフトへの入力データをAIが下書きし、人が確認・修正する運用を想定しています。 紙の請求書が多い、会計ソフトが古いなど、データが電子化されていない会社では AI化後の時間はこれより長くなります。社員数・業務量が異なれば、この数字も変わる目安です。

最初の1本は、経理か営業事務のどちらにするか

会社の中で、経理担当と営業事務担当のどちらの負担が重いかで決めます。判断の目安は次のとおりです。

  • 月末に経理担当が残業している会社: 経理から始めます。仕訳入力と請求書突き合わせは 型が最も決まっており、効果を実感しやすい業務です。
  • 見積書・提案書の作成に営業担当の時間が取られている会社: 営業事務から始めます。 過去のひな形を土台に、案件ごとの差分だけを直す運用に切り替えると効果が出やすくなります。
  • どちらも甲乙つけがたい会社: 発生頻度が高いほうを選びます。 毎日発生する業務のほうが、月単位で見た削減時間が大きくなるためです。

どちらを選んでも、最初の1本は1業務に絞ります。複数業務を同時に始めると、 確認する人手が分散し、どちらも中途半端になりやすくなります。

最初にやってはいけない業務

次の3種類は、最初の1本には向きません。理由とあわせて説明します。

  • 与信判断・与信枠の設定: 取引先の信用力を見誤ると、貸し倒れという不可逆な損失につながります。 AIに任せるのは、判断材料になる情報の整理までにとどめます。
  • 採用の合否判断: 応募者の人生に関わる決定であり、判断の根拠を人が説明できる状態を保つ必要があります。 AIに任せるのは、応募書類の要点整理と面接日程の候補提示までです。
  • クレーム対応の一次窓口: 感情的な対応が必要な場面で定型文を返すと、かえって信頼を損ないます。 よくある質問への回答はAI化できますが、クレームの一次対応は人が担当します。

これらの業務は、AI化そのものが不可能というわけではありません。 「最初の1本」として選ぶと、失敗したときの影響が大きいために避ける、という位置づけです。

選んだあとの進め方

最初の1業務を選んだら、次の3ステップで進めます。

  1. 導入前の1〜2週間、対象業務にかかっている時間を記録する。 感覚ではなく記録で比較するための土台になります。
  2. その業務の中で、最も繰り返しが多い作業から着手する。 業務全体を一度にAI化しようとせず、 最初は一部の作業だけに絞ります。
  3. 導入から1〜3か月後、記録した時間と比較する。 効果が出ていれば次の業務に広げ、 出ていなければ運用のどこに手間が残っているかを確認します。

一度に複数業務へ広げず、1業務ずつ確認しながら進めることで、 どの工程が効果を生んでいるかを見失わずに済みます。

つまずきやすい落とし穴

  • 紙の書類が多いまま始める。 AIが読み取れる形にデータを整えていないと、 かえって手間が増えることがあります。
  • AIの出力を確認する担当者を決めていない。 出力をそのまま使ってしまうと、 誤りに気づかないまま外部に出てしまう可能性があります。
  • 最初から複数業務に手を広げる。 効果測定が曖昧になり、 どの業務のどの工程が効いたのか分からなくなります。

公表されている調査でも裏付けられるか

独立行政法人中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した実態調査(全国の中小企業1,668社が回答)では、 業務分野別のAI導入率は総務・管理部門が68.3%で最も高く、営業・販売・サービス部門(60.3%)、 経営・企画部門(58.5%)が続きます。経理業務は総務・管理部門に含まれるバックオフィス業務の一部であり、 実際の導入も総務・管理部門を中心に進んでいます (出典: 独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)」 https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202603_AI_point.pdf )。

中小企業のAI業務選びでよくある質問

Q. 中小企業がAIを最初に使うべき業務は何ですか。 判断がいらず、量が多い業務です。具体的には経理の仕訳入力や営業事務の見積書下書きが該当します。

Q. 経理と営業事務、どちらから始めるべきですか。 どちらの担当者の負担が重いかで判断します。迷う場合は、発生頻度が高いほうを選びます。

Q. 人事や顧客対応はAI化できませんか。 一部はできます。ただし合否判断や個別対応は人が行い、 書類整理や一次回答の下書きまでをAIに任せる形にとどめます。

Q. 最初にAI化する業務を間違えるとどうなりますか。 判断が絡む業務を最初に選ぶと、誤りが出たときの影響が大きく、 社内でAI活用そのものへの不信感につながることがあります。

Q. 複数業務を同時に始めてはいけませんか。 禁止ではありませんが、すすめません。確認する人手が分散し、 どの業務で効果が出たかが分かりにくくなります。


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